SHORT U | ナノ

 コーヒーバニラアイス1

「あつーい、だるーい、ねむーい、うう、もうやだ」

「……泣くなぁ、余計暑いわ…」

「なによ、その言い方!女に優しくできない男は最低!浮気してやる、隆二と浮気!臣でも直人さんでも!!」

「あかーん!お前ほんまにしそうやし、洒落にならんから。しゃあない、アイス食う?」



ベッドの上で転がっていた身体を起こしてキッチンの方へ向かうマイダーリン山下健二郎。

三代目のパフォーマーの健二郎とお付き合いしてもう1年がたつ。




「食べる!食べる!かき氷!」

「ないわ、んなもん。コーヒーの中にバニラが入った棒か、あー練乳ならあんで?どーする?」



冷凍庫にアイスが入ってた記憶なんてないものの、健二郎が言うならあるんだってテンションがあがった。



「練乳だけとかまずいよね。コーヒーバニラでいい!」

「ほんまか?」

「は?うん」

「言うたな、お前!」

「えっ?」



ニヤリと微笑んだ健二郎は、何故か腰を振ってベルトに手をかけた。

まさかとは思うけど、物凄い嫌な予感が頭を過ぎる。



「やっぱり棒はやだ!!つーかコーヒー味じゃなかったら噛み付くよ?」

「あかんよ、ぺろぺろせな」



……やっぱり。

アイスなんて冷凍庫に入ってなかったもん!

あの野郎、このクソ暑くてダルイって言ってんのにするわけない!



「え、もうバレたん?俺のアイスやって」

「バカバカバカ!デリカシーもロマンもない!やっぱり隆二と浮気する!スマホかして!」



健二郎のジーンズのポケットに手をかけてスマホを奪い取る。



「あ、お前!あかんよ、隆二は!」

「なんでよ?女いるの?」

「女って言うなや。おらへんけど」

「じゃあいいじゃん!臣は?女いる?」

「せやから言い方あかんよ!まぁ、臣もおらへんけど、仲ええメイクさんはおるかな…」

「ふうん。直人さんは?」

「あの人はおるわ。デレッデレになるくらいの彼女が…」



え―――――!

直人さん女いるの?ショック!!

しかもデレッデレって…




「どんな人?」

「どんな?って、可愛ええ人やで。リーダーNAOTOが一瞬で消えるぐらいなぁ」

「なんか意外…。恋愛に興味無いフリしてるのにね、直人さん」

「まぁ特別やろな、あの人は。それよりユヅキ、俺のアイスどないすんねん?」



ベルトを外して脱ぎかけている健二郎から一歩離れる。



「いらない。まずいし」

「あほ、まずい言うな!しようや?」



あーでた。

欲求不満?

この前したばっかじゃん。

夏は性欲も失せるよー健ちゃん。



「性欲なさそうな顔のくせに、全然あるねぇ…」



テレビ番組でそんなこと言われていたけれど、この健二郎はヤリたがり。

お年頃って年でもないのに、ヤリたがりだった。

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