SHORT U | ナノ

 似たもの同士1

「お疲れ様、岩ちゃん!」



缶珈琲片手に椅子の片付けをしていた後輩の岩田くんにそれを渡した。



「あ、いただきます!ありがとうございます!」



爽やかな笑顔を振りまく岩ちゃんは新社の時からずーっと我社でトップに入る人気者で。

仕事はできる!

顔はいい!

頼りになる!

動ける!

まぁ、彼が人気なのも分かるけど。

年上の私でさえ、たまにドキッとするようなシチュエーションに遭遇するし。

かと言って若い子に混ざってキャーキャーすることなんてないけど。



「片付け終わったら解散だから。みんな打ち上げ行くって言ってるから岩ちゃんも行ってきたら?」



日曜日の今日はうちの課のお得意さんの所でのイベント手伝いで、ほとんどの人が駆り出されてて。

夕方になってようやくイベント終了が告げられ、散らかったフロアだったりの片付けの最中だった。

だいたいこの後若い子達は打ち上げで飲み会。

私も数年前までそれに参加していたけど、さすがにもう引退して帰る方向に。



「ユヅキさんは?」

「私?帰るけど」

「んじゃ俺も帰ります!送るんで一緒に帰りましょう!」

「……え?岩ちゃん…?」



何言ってんの?って。

彼がどういう意図でそんな無駄なこと言ってんのか?って。



「あ、田崎さんと?」

「へっ!?敬浩?」

「あーはい。付き合ってるのかなー?って思ってるんっすけど…」

「いやいやいやいや、ないないない!」



慌てて手を左右に振って否定すると、嬉しそうな笑顔を見せて。

…そんな顔反則。

そーいうことされると、嫌でも期待したくなるじゃない。



「じゃあ田崎さんの片思い?」

「いやまさか、それもないよ」

「それなら俺にもチャンスはありますよね?」



冗談なのか?本気なのか?口角を上げて岩ちゃんがニコッと王子様スマイルを私に飛ばす。

眩しくて目がくらみそうなそれに一歩後ずさり。

本当に期待しちゃうからやめて。

…そう言えばいいのに、心の奥は早鐘をうっていてどうにも止まらない。

今まで年下だからって諦めてきた想いが、ここにきて爆発しそうなくらい熱く燃え上がってるように思えた。
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