SHORT U | ナノ

 あたしの夢1

将来の夢って言えば大げさかもしれない。

でも、物語を書いている時だけはこの現実の世界から逃げられるもので…

それが唯一のあたしの楽しみだった。

例えクラスのみんなからヲタクだと嫌われていたとしても…




「愛沢、この問題解いてみろ」



先生に言われてハッと顔を上げた。

つい夢中になってノートに小説を書きためていたあたしは今何をしているのかさっぱり分からなくて。



「また変な妄想書きためてんの、愛沢!キモーイ!!」

「つーかそれ現実逃避ってやつ?まぁ仕方ないか、何も楽しみなんてなさそうだしね」

「愛沢、授業中はやめなさい!」


…「はい」。



誰に何を言われてもあたしはこの世界にいき続ける。

いつかきっと花開くと信じて。






そう思っていた矢先だった。


家に帰ってスクールバッグを開けて吃驚した。



「うそ、やばい!!」



ベッドの上で制服のまま大声を発したものの、今更どうすることもできなくて。


うちの学校、夜は定時制の授業があってあたしの教室も勿論使われている。


やばいよやばいよ、誰かに見られたらやばいよ…


どうしよう。


今から行ってもバッティングするだけだし。


せめてあたしの席に誰も座らないで!!!


もう神頼みしかないって思って、窓を開けて空に向って願いをかけた。





翌日。

おそるおそる教室入って自分の席につく。

引き出しにスッと手を入れると、そこにはあたしの夢が詰まったノートがちゃんと入っていた。

思わずそれを取り出して胸に抱きしめる。

よかった〜。

ホッと胸を撫で下ろして続きを書こうとノートを開けた。



「…え」



途切れた所に挟んであったノートの切れ端。

そこには男の人の字?で、一言「うまいじゃん!」って書いてあって…。

その一言が恥ずかしいけど嬉しくて、何とも言えない気持ちだった。



小説家になるという夢を抱きながらも、まだ誰にも読んで貰ったことなんてなくって。

自分がどのレベルなのかなんて全く分かってない。

誰かに言うのも何だか恥ずかしいし、自信もない。

でもいつか見て貰いたいって思っていた。

誰かに読んで貰えたら…って。




「やったぁ!!」



思わずガッツポーズをすると、クラスの女子に変な目で見られた。

いいのいいの、今日は気にしない!

いつもの嫌味も今日だけは構わないよ〜っだ!


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