SHORT U | ナノ

 イニシャルN1

入社して初めて迎えるクリスマス。

年内仕事納めの今日は社内で納会が行われる。

新入社員の私達はその幹事を任されていた。

朝からピザ屋だったり寿司屋だったり酒屋に出前を頼んで、出し物に使う衣装を揃えてって、社内を走り回っているんだ。


ちょうど一息ついて休憩室で紅茶を飲んでいると、同じようにどっと疲れた顔の片岡くんが入ってきた。

手には沢山のサンタクロースの衣装を抱えて。

ドン・キホーテの袋からそれが見え隠れしている。



「片岡くん!すごい荷物だね」



私の声にビクッと肩をあげて「なんだユヅキちゃんか、びびったー」そう言ってポケットから煙草を取り出してジッポで火をつける。

壁に添って置かれたソファーに足を広げて座ると後ろに寄りかかった。


ふぅーって上を向いて白い煙を吐き出すその姿はちょっと男って感じで。

内心ドキドキしている私。



「それ1人で買ってきたの?」

「そー人使い荒いんだよね、黒木さん!」



片岡くんを見てくれている黒木さんは、わりと適当というかチャラくて有名で。

面倒な仕事のほとんどが片岡くんに回ってくるらしく、いつもヘトヘトになっていた。



「あはは、お疲れ様!」



自販機で缶コーヒーを買ってそれを片岡くんのオデコにピタッとくっつけた。



「わお、サンキュー。あーやべぇユヅキちゃんが天使に見える!」



隣に座る私の頭を軽くポンポンって撫でると、缶をあけてコーヒーをごくごく飲み干した。



「ねー片岡くん!雪、降るかなぁ?」

「え?今日?」

「うん。初雪!好きな人と一緒に見ると一生幸せでいられるんだってよー」



初雪のジンクスを思い浮かべて隣の片岡くんを見ると飲み終えた缶コーヒーをオデコに当てて目を閉じている。



「ホワイトクリスマスなんて素敵じゃない?」



目を瞑っているのをいいことに片岡くんをガン見していた私に、パチッと急に目を開ける片岡くん。

やべ、顔覗き込みすぎたか。

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