▼ オトナ女子にMerry Christmas1
いつから好きだった?とか…
なんで好きなの?とか…
そんなこと覚えていない。
気づいたら好きになってた。
気づいたら私の心の中にいた。
そうもう、きっとずっと前から彼に惹かれていたんだ―――
「亜嵐!お昼行こっ!お姉さんが奢ってあげる」
財布を顔の横で振りながら新入社員の白濱亜嵐の腕を取って立たせる。
ざわつくフロア内。
分かってるわよ、言いたいことは。
あのオバサンまた懲りもせず金を餌に亜嵐を釣ってる、痛いよね〜。
って、ところでしょ!!
ええ、分かってます。
言われても仕方ないと思ってる。
新入社員の彼はまだ24歳。
私は―――30歳。
この年代の6歳差は結構大きい。
50、60になった頃の6歳差なんて対したもんじゃないのかもしれないけど、今の年代の私達にはたかが6歳の年の差が物凄く大きなものになっていた。
だから最初は諦めようって思った。
いつの間にか亜嵐を好きになっていた自分の気持ちは間違いで、好きじゃないって思いこもうとしていた。
「ユヅキさん、俺払いますって」
「いいよ。私のが稼いでるし!」
「でもなぁ。せめて割り勘にしてくれません?」
「じゃあ次のランチは割り勘にしてあげる!今日は私の奢りね?」
「…うん」
「ふふ、可愛い!亜嵐だいすきっ!」
ギュッと腕に体ごと絡み付いて亜嵐の温もりを感じる。
チラッと横目で私を見てニコッと微笑む亜嵐。
そんな亜嵐に抱きつく勢いで私は指を絡めた。
今だザワザワしてるフロア内。
耳障りな声が微かに聞こえる。
微妙な加減で言われる言葉に傷付くような歳じゃないけど、傷つかないわけでもない。
「まただよあれ、恥ずかしくないのかね〜」
「いい歳してみっともないっつーの」
「亜嵐くん怖くて断れないの、可哀想っ」
「誰かあいつどーにかしてほしい」
ヒソヒソ囁かれるそんな罵声に気づかないほど馬鹿じゃないけど、気づかないフリをするしかできない。
ムキになるなんてかっこ悪いことしたくないし、それができるほど若くはない。
だから無視。
それに対して亜嵐が彼女達に何を言うこともなかった。
これがこの時代の若者なんだって。
私が若い頃は自分の好きな女に何か言われるもんなら「ふざけんな!」ぐらい言ってくれる…
ということは、亜嵐は私をただの会社の先輩としか見てない…
重々承知の上だけど、だからって年上って理由だけで引くなんてバカバカしいことはサラサラできない。
悲しいけどそれが私の性格なんだ。