▼ あの日から1
高校生活最後のクリスマス。
3年の中でも一際仲の良いうちのクラスは、終業式の終わったその日、クラスのみんなでクリスマスパーティーをすることになっていた。
幹事はクラスのお祭り男の直人くんと、それから眞木くん。
少し大人びた彼は、私の好きな人だった。
好きだと気づいたのは、剣道の夏の大会の決勝戦で眞木くんが少しの差で負けてしまった時。
応援に行った私達の前ではキャプテンとして立派な姿を見せてくれたけど、みんながいなくなった体育館で、眞木くんは1人泣いていた。
誰にも見つからないように声を殺して1人で。
たまたま体育館に忘れ物をした私は、その眞木くんの姿を見て、どうしようもなく胸がドキドキして、その姿をずっと見ていた。
あの日の事は、今もずっと私の胸の中に置いてある。
すごくすごくかっこいいと思ったんだ。
それが私の恋の始まり。
「では今からプレゼント交換をしまーす!」
直人くんの声かけに、箱の中にある番号のついた紙を全員引いて、それをせーの!で一斉に開いた。
そこに書いてあった1って番号。
それを取りに行くと、「あ、それ俺からだよユヅキちゃん!」ニッコリ微笑んでそう言ったのは、まさかの眞木くん。
うそ、めっちゃ嬉しい!
内心大きくガッツポーズをしつつも私は冷静を装って「わーなんだろ!」なんて返した。
眞木くんは11番を持っていて。
「これがユヅキちゃんからだったら俺達運命だよね?」
「…へ?」
「こんなにいっぱいいるのに自分達が選んだもん届くなんて、運命だよねって。好きでしょ女子ってそーいうロマン!」
垂れ目の大きな瞳を細めて笑う眞木くんは女心がよく分かっているって。
だけど残念ながら眞木くんの手の中にあるそれは私が選んだものじゃない。
「…それ私のじゃないけど…違うけどでも…」
眞木くんの運命の人でいたい。
最後の一言が言えなくて。
もしかしたら今日はクリスマスイヴだし、奇跡が起きるんじゃないか、なんて浮かれたことすら思っていた。
でも結局そんな奇跡は普通に起きることもなくて。
「ユヅキちゃん?」
「あ、ごめん。なんでもない!帰るまで楽しみにとっとくね、この中身!」
そう言って私は輪の中心にいるゆきみと直人くんの所に行った。