▼ ダージリン王子2
「あのさ…今俺の主人お前!他の男の名前とか引くから…」
ムスってしている敬浩。
「なるほど!ヤキモチだ!」
「ばっか、ちげぇよ!」
「キャハ〜可愛い!!たかぼーって呼んでもいい?」
「断る!今の俺はダージリンだ!」
「いいじゃん。顔が敬浩なんだから…」
「そんなことよりお前、願いはないのか?」
言われてキョトンと敬浩を見返す。
願い?
「え、お願いまで叶えてくれんの?」
「…何の為に俺を呼んだんだよ、お前…」
「ねぇさっきからお前お前って…私ユヅキっていうの。ユヅキって呼んでよ〜」
「ユヅキな、悪かった」
ペコっと頭をさげる敬浩。
「願い…私と付き合ってくれる?」
何も考えなしにそう言ったら呆れた顔で睨まれた。
「ダメだ。それだけは絶対にうけらんねぇ…」
「なんで?」
「掟だ。主人だったり人間を好きになるのはルール違反で俺達は一生あっちの世界に戻れなくなる…」
「ふうん。じゃあ空飛びたい!」
「それがお前の願いか?」
ジッと私を見つめてそう言う敬浩。
こんなに小さいのにその顔は真剣で。
考えなしに答えたことを私は後悔するはめになるなんて…―――
「うん、だってドラエモンもいないし、悟空だっていないし…空飛べたら気持ちいいだろうな〜って。今ある嫌なこと全部綺麗さっぱり忘れられるんだろうな〜って…」
私の言葉に敬浩は手のひらの上でペタンっとあぐらをかいて座った。
「ユヅキ、嫌なことあったの?」
「別にそうじゃないけど、何も考えたくない時とかない?今の生活全部変えるぐらい気持ちがハイになることなんてそうないし…」
「まぁな。けどみんなそうやって矛盾抱えながらも生きてるんじゃねぇの?」
ごもっともな敬浩の意見だったけど、見かけが小さいからどうにも可笑しくて。
反対の手で敬浩のオデコを小指でつつくと、簡単にコロンって転がった。
「いってぇ!何しやがる!」
「だってあまりにも可愛くて…」
「いや言ってることとやってること違うだろ!」
「空、飛ばしてくれるの?」
「また聞いてねぇし…分かった。その願い叶えよう!」
敬浩がそう言ってパチンって指を鳴らす。
目の前が一瞬真っ白に光って…―――「嘘でしょ…」手のひらの上にいたはずの敬浩が実物大の大きさでそこに立っていたんだ。