▼ 101回目2
大きな水槽の中を泳ぐイルカ達。
係のお姉さんが手でサインを送ると水面の上を大きく飛び跳ねてジャンプ。
水がバシャーッ!ってあたし達の所までかかった。
アキラを見ると、髪までしっかりかかっていて…
せっかくキチってセットした髪がちょっとだけしんなりしている。
でもそれが普通っぽくて、ちょっと妬ける。
「アキラの前髪おりちゃった…かっこいいけど何かやだ」
「ばーか。ユヅキ以外俺のことなんて見てねぇよ」
「そんなことないよ、アキラかっこいいから!」
「え、俺かっこいい?」
耳を頬に寄せてそう聞くもんだからカアーって顔が赤くなるのが分かった。
あたしにとってはいつだってナンバー1のオンリー1だもんアキラは。
どんな姿だろうと最高にかっこいいんだよ…――恥ずかしいから言えないけど。
コクって小さく頷くと、アキラがポンポンってまた小さく頭を撫でてくれる。
身体が熱くて、手で顔の前を仰いでいたら、係のお姉さんが言うんだ。
「ではここでお客様の中から一緒にやってくれる人、いませんか?イルカとキスできる貴重な体験ですよ!」
こーいうのは子供がやるもんだよねぇ。
辺りを見回してみるけど、子供が全く反応を見せていない。
「おいおい、最近の子供ってこんな冷めてんのか?」
残念そうなアキラの声にあたしも納得。
若干お姉さんも困った顔で探していて。
「カップルさんはどうですかー?ドルフィンキッスを受けたカップルは幸せになれるってジンクスもあるんですよ!」
「えっ!?」
…しまった、つい…。
あたしの横でアキラがクスクス笑っている。
だってお姉さんの足があたし達に近寄ってきているもの。
「幸せになれるんですよ!」
念を押してそう言われて、あたしとアキラはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「ありがとうございま――す!ではこちらへどうぞ!」
誘導されて歩いて着いて行った。
お姉さんに教わりながら手をクルっと動かすとイルカが輪っかを潜り抜けた。
「わ、すごいっ!」
「彼女上手ですね〜!彼氏も頑張って!」
何故か、アキラに反応しないイルカにちょっと笑いそうになりながらもあたしはまたサインを送る。
今度は台の上にあったビーチボールを口で突く。
ポーンってボールが飛んで元の位置に戻る。
「わー!すごーい!」
「お姉さんアイツ、雄でしょ?」
不意にアキラがそんな質問。
「だって俺のことスルーじゃん!ユヅキに惚れたなアイツ〜」
「おお、お兄さん正解!雄ですよ、この子。あはははヤキモチ妬いてるの、可愛いな〜」
係のお姉さんの言葉に客席から笑いが起こる。
「ま、どんなに妬いても俺のだからな!あ、俺大人げないですかね?」
場を盛り上げる為とはいえ…アキラからそんなこと言われるなんて嬉しくて。
あたしもアキラだけだよ―――!!って、心の中で叫んだんだ。