SHORT U | ナノ

 紅い痕3

ゆっくりと舌を絡ませる俺とユヅキ。

舐めるように口内に舌を迷い込ませて舌先でユヅキの舌を突くと、チュっと絡め取られた。

舌が触れ合う度にもれる甘い音に酔いしれつつ、何度も何度もキスを交わす。

柔らかいユヅキの舌を俺の舌で舐めると「ンッ…」って可愛らしい声が漏れて…

それだけでどこぞの俺自身が軽く反応していくのが分かった。

でもこのキスを止めるなんてとうていできなくて…

だんだん激しくなっていくキスだけじゃ物足りなくなってくる。

ユヅキの耳に舌を絡ませると「アアアアッ…」よりいっそう大きな声があがった。



「ケンチ…―――な、ぶっ…あははははははっ!!」

「え?」


目の前で大声を出して笑うユヅキにキョトンっと拍子抜けしている俺。

何で笑ってんの?


「え、なになに?」

「もう、気持ち悪い…」

「えええ、俺が?」

「あはははははっ、お腹痛いよ〜」

「どうしてよ?」

「きて、こっち」


ユヅキに腕を引っ張られて洗面台に行くと、鏡の方を向かせられて…


「うおっ!!」


そこにいるのはまさにドラキュラ…とでも言おうか。

ユヅキの真っ赤な口紅が俺の口元にうつっていて…

よく見るとユヅキの口の周りもすごいことになってるじゃん。


「ハロウインの仮装、これにしよっか?」

「え、仮装する?」

「うん、哲也たちがハロウインパーティーするって呼ばれてる〜」

「え、俺聞いてない!」

「言ってないもんっ!!」

「な、なんで?」

「だってケンチ仕事でしょ?」

「いやいや、哲也行けるなら俺も行けるでしょ?」

「え〜じゃあ哲也と内緒で会えないじゃん…」

「会わなくていいから!危ないな〜ユヅキってば」

「蚊にも刺されないで欲しいんだもん…ケンチは私のだもん…」


プウ〜って頬を膨らませてそう言うユヅキがめちゃめちゃ可愛い。

もう若干危なっかしいけど、結局俺ユヅキには勝てない。


「蚊にも刺されないから今度からは!」

「じゃあケンチも連れてってあげる!」

「ありがとう!」

「よしよし」


…あれ?

なんかおかしい?

完全ユヅキの尻に敷かれてない?

チラっと視線を向けると鏡の前でクルクル回ってこの格好を楽しんでいる。

可愛い…単純にそう思える。

なんだって許しちゃうんだよね、惚れた弱みなのかもしれないけど。

この関係が、俺は好きなんだ。




*END*
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