SHORT U | ナノ

 悪魔の微笑み6

「えっ!?」


事情後、スマホを見るとすごい数の着信。


【ユヅキちゃんどこ?】

【どうしたの、何かあった?】

【電話して!俺待ってるから!】


しばらくしてからまたメッセージが入ってて。


【アキラに聞いた。俺女なんていないからっ!信じてよっ】

【ここで言うことじゃないかもしれないけど、マジでユヅキちゃんのこと好きだよ】

【もしかして、直人と一緒じゃないよね…?】


…頭が混乱してきた。


「直人くん…」

「なに?」

「哲也くんと受付の子って付き合ってるの?」

「知らない。違うんじゃない?」


…さっき付き合ってる風に言ってたよね?


「直人くん私騙されてたみたい…」

「誰に?」

「…アキラくんと直人くん」

「俺?」

「うん。だって哲也くん彼女なんていないって!!」

「いないよ、哲也でしょ?」


シレっとそう言うんだ。

それから私の首筋を指差してニコっと笑ったと思うと何故かドヤ顔で続けた。


「それ哲也に見せろよ、俺達が愛し合った印!」

「…知ってたの?哲也くんに誘われてること…」

「哲也に聞いたよ。今夜ユヅキに告るって…」


次から次へと飛び出てくる直人くんの言葉に何だろうか…物凄い黒さを感じてしまう。


「直人くんあの…」

「俺がユヅキを好きなのは嘘じゃないよ。それも信じらんねぇ?」

「…分かんないよ、ばかー」

「言っとくけど、どんな汚い手使っても俺、ユヅキを手に入れるつもりだったから…」


直人くんの言葉を聞くと、直人くんの気持ちが嘘じゃないって思える。

でも結果的に哲也くんから横どりしたっていってもおかしくないんじゃないかって。

だけど、直人くんを信じて直人くんを選んだのは私自身であって、誰の責任でもないんだって。


「…分かった、じゃあ私、哲也くんと浮気する!」

「…やれるもんなら?」

「いいの?本当に…」


私の言葉に眉毛を下げる直人くん。


「嫌に決まってんだろ」


ズルイよ、そうやって感情出すの。

いつもみたいにしててくれたら直人くんを悪者にできたのに…。


「ばかっ!しないよっ!!」


そう言って直人くんに抱きついた。

ギュっと私を抱きしめ返してくれる直人くん。

優しく背中を撫ぜてチュって肩に小さなキスを落とす。


「哲也くんにはちゃんと言う」

「俺から言うよ。ユヅキに嫌なことさせるつもりねぇから」

「…私の王子様なんだからもっと優しくしてよ?」

「…出来る限りな」

「…うん」

「じゃあ第二ラウンド!」

「え?」


フワっと直人くんが私をベッドに埋める。

明日哲也くんにこのことがバレたらすごい嫌だって思いながらも、直人くんを信じようって気持ちを優先させた。

だけど、そんな私を見て直人くんが真っ黒に微笑んだことを、私は知らない―――…




*END*

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