▼ 悪魔の微笑み4
「ユヅキ、これコピー頼む!」
言われたのはこれまた同期のアキラくん。
哲也くんと親友でしょってくらい仲が良いアキラくんもよく私に頼まれごとをしてくるわけで。
デザイン課で色んな物をデザインしているアキラくんは手先が器用で、そのイカツイ外見からは見受けられないくらい斬新な発想でデザインをしていたりする。
加えて、怖そうに見えるのに話すとすっごく優しいからか、女子社員達からこれまた人気だった。
「何部?」
「ん〜適当に300ぐらい?」
「適当の意味がちょっとよく分からないんだけど、適当に300でいいの?」
「おうおう!哲也のフォロー回ってっから女が寄ってきて香水くせぇわ、全く!」
…女が寄ってきてって、アキラくんそれいらない情報。
ムウって口を尖らせてると顎をガっと掴まれる。
「何?俺とチューしたいの?」
ニヤって笑うからブンブン首を横に振って否定した。
「なんだ、紛らわしい…」
スッて手を離したけど…紛らわしくはないでしょ!!って心の中で突っ込んだ。
いきなり掴まれたせいで顔は赤くなるし、心臓はドキドキするし、これじゃあちょっとアキラくんのことが好きみたいって思われそうで。
呼吸を整えてからジロっと睨んでみた。
「なんだ?やっぱされたいのか?」
「まっさか!今の情報いらないよって言いたかっただけ。哲也くんの傍に女がいっぱいって…」
「あ〜仕方ねぇだろ、哲也だよ?まぁあいつもその王子様感を楽しんでるって言ってたけど!」
ドクンって心臓が動く。
王子様感を楽しんでる?
それって私に対しても?
目が泳ぐ。
こーいうのは聞いちゃいけないって分かる。
第六感がダメだって言ってる。
だけどズルイ。
そんないらない情報を持ってきたアキラくんがズルイ。
気になってる私。
誰が何て言おうと、哲也くんのこと…気になってる。
「王子様感楽しんでるだけってこと?」
「そーそー!哲也だって女いるもん!」
ほら、聞かなきゃよかった。
親友のアキラくんが言うなら間違いないよ。
私なんか相手にされるわけなかったんだよって、遠まわしに哲也くんが言ったような気がした。