▼ 秘密のレッスン2
半年前から俺の家庭教師をしてくれてる3つ上のユヅキさん。
大学生の兄貴の知り合いで週に一度俺の家に来てこうして英語を教えてくれてる。
初めて見た時、単純に可愛らしい人だなーって思ったけど、それ以上感情が膨らむこともなく、至って普通に過ごしていた。
それがあの日、一変したんだ。
兄貴に頼まれたもんを大学に届けるハメになって、暇だからって哲也も一緒に行くって。
ユヅキさんいるかなーって密かに思っていた俺の側に飛び出してきたユヅキさん。
だけど俺達には全く気付いてなくて。
「修羅場?」
「は?」
「うわ、面白ろそう!」
そこには女2人と男1人。
1人はユヅキさんで、他は知らねぇ。
「単刀直入に言うけど、章大と仲良くしないで!」
「なんでよ?」
「なんでって章大は私の彼氏だよ!」
「知ってるけど、彼女に疑われるようなことはしてないわよ!」
「そうやぁ、アキ。俺とユヅキは別にそんなんちゃうわ」
「じゃあ2人きりで遊ばないでよっ!何で2人で遊ぶの?他の人も一緒でいいじゃないっ」
泣き出す彼女を彼氏が宥めていて、ユヅキさんはジッとそんな彼女を見て小さく言葉を発した。
「分かった。もう章ちゃんと2人きりで会わない。約束する…でも本当にやましい事ないから。彼女ならそこ信じてあげなよ。章ちゃんが可哀想…」
「ユヅキ…」
「も、行くね。今日バイトだから」
クルリと反転したから慌てて哲也の腕を引いて木の影に隠れた。
「何で隠れんのよ?」
「いーから!」
俺達の横を通り過ぎるユヅキさんは、真っ直ぐに前を向いていて、だけど何となくほおっておけなくてオレはユヅキさんの後を追った。
しばらく行くとピタッと立ち止まって…
もう無意識だったんだ。
「ユヅキさんっ」
彼女の前に回った俺を見てすげぇ吃驚したけど、その瞳は濡れていて。
「直人く…ん」
何も言わずにユヅキさんの手を握った。
かける言葉なんて分かんねぇからただ俺の温もりを与えたくて手をギュッて強く握ったら、フワッてユヅキさんが俺の腕の中に入ってきて。
小刻みに小さく震えているユヅキさんを強く抱きしめたんだ。
それが俺の恋の始まり。
いつも明るくて元気なユヅキさんの弱さを見た俺は、もう二度とそんなことさせないって。
これからは俺がユヅキさんを守るんだって、誓った。
――――――ものの、何一つ進んでいないのが現実であって。
告白すらできていないモタモタしている俺を毎日のように哲也は面白おかしく見ては茶々を入れてくる。
さすがにダメだと思って今夜決死の大告白大会で一発逆転を狙うってわけ。