▼ 日常に花束を4
「順調だねぇ、何か」
「え?」
「隆二くんがうちの部署に来ても変わらないっていうか、むしろ深まってない?」
「あ、哲也さんと?」
「うん!ユヅキと哲也さんの仲良し度が増してるって、直人さんも私も思ってる〜」
このこの〜!ってゆきみが肘で私の脇腹をツンツンしてきて。
第三者の目から見てもそう見えてるんだ〜ってちょっと嬉しかった。
「うんまぁ…」
自分達のことを人に話すのは何だかちょっと照れくさい。
でも自慢したい気持ちがないわけじゃない。
隆二が戻ってきたからといって私達の仲が壊れるなんてことはなく。
ちゃんと話し合って別れたせいか、隆二も私に対してそういう態度なんてとらないし、今は普通に仕事を一緒にしていても何の違和感もなかった。
「あは、もう何かめっちゃ幸せオーラ出てるなぁ。近々また4人でご飯行こう!」
「うん。言っておくね哲也さんに!」
ゆきみと話してると、「帰んぞ〜」来たのは直人くん。
ちょっと急いでるみたいでゆきみの腕を引っ張っていて。
「今日店予約してんだよ。ユヅキちゃんまた!ゆきみ急いで!」
「ユヅキ、ごめんっ!またねっ!哲也さんに宜しくっ!」
手を振って小走りでいなくなった二人を見て私も頬が緩んだ。
なんだかんだであの二人もラブラブじゃん。
幸せ気分で哲也さんのフロアに行くとちょうど帰る所だったのか、スーツのネクタイをキュっと緩めて軽く手をあげた。
「ユヅキ、お疲れ!」
「お疲れさま、哲也さん」
「じゃ行こうか」
肩に触れた哲也さんの手が私達を外へと誘導する。
外に出ると風がピューっと吹いていてほんのり肩をすくめた。
「寒い?」
「あ、大丈夫」
「なんだ。寒いって言ったら抱きしめちゃうのに」
「え…じゃあ寒い…」
私の言葉にプって笑う哲也さん。
クシャっていつもの大きな手が私の髪を撫でる。
「仕方ないなぁ、温めてあげちゃう」
フワリと哲也さんに抱きしめられて、胸の奥がキュンってする。
会社の前だっていうのに、今この瞬間が幸せで。
今日は何かもういいやって。
このままキスしたーい!って気持ちは仕方なく飲み込んだ。