SHORT U | ナノ

 日常に花束を2

だけどいつだって誠実でいざって時にはさりげなく助けてくれる哲也さんを意識せずにはいられなくって。

私から告白なんて考えてもみなかったけれど…


「嬉しいです」

「ほんとに?」


隆二のことも哲也さんと一緒にいたらいつの間にか忘れていたってことに、告白されて気づいたんだ。

この人の優しさに甘えてもいいんだよね。


「はい。あの私も好きです哲也さんが」

「よかった…」


スッと私の手を握る哲也さん。

そんな顔するんだ。

安心したような哲也さんの顔に、自然と笑顔が零れる。


「あの、お願いがあります」

「なぁに?」

「…抱きしめてもいいですか?」


触れたくて。

哲也さんの温もりに包まれたくて。

普通女から言う台詞なんかじゃないって思うけど、想いが溢れて止まらない。

哲也さんはほんの一瞬目を見開いてすぐに肩をすかして笑った。

クシャって私の前髪に触れて、距離が一気に縮まる。

紳士な哲也さんの表情が一瞬で男の表情に変わった…。


「俺の台詞とられたよ、ユヅキに…」

「だって…」

「シッ…」


唇に指を添えられてドキンっと胸が脈打つ。

ゆっくり近寄ってくる哲也さんにそっと目を閉じる。

チュ…触れたのは唇じゃなくて頬で。

目を開けるとニヤって口端を揺るめて「違った?」首を傾げている。


「違ってないけど、それじゃ足りないです…」

「好きだよ、そーいう所も」


言い終わらないうちに哲也さんの温もりに包まれた。

強く背中に腕を回して抱きしめる哲也さんの肩に顔を埋める。

あーいい匂い。


「それで…今夜の予定は?」

「勿論、哲也さんの所に連れてって…」

「忘れられない夜にしてあげる」


その言葉の通り、一生忘れらない…そんな夜になった―――




- 42 -
prev / next