▼ 欲張り3
「調子がいいって思った?」
ちょっと覗き込むように私を横から見つめる直人に「うん」って笑うと「だよね」って笑い返された。
そのままキュって繋がっている手に力が込められる。
それが私達の気持ちを表しているみたいで嬉しい。
二人で歩く月夜道は人もいなくて私達の声と足音だけが聞こえている。
規則正しく歩くその音に紛れて直人と私の声が重なって、いつも一人の道がこんなにも明るくなるなんて、隣に直人がいるってだけですごいことなんだって一人幸せを噛み締めていた。
美月に勇気を出して欲しくてついでしゃばってしまったことだったけど、背中を押されたのは私も一緒だな〜っと。
「片想いよりも両想いのがいい…」
「うん俺も…。敬浩くんに言われて両想いなんだって思ってからちょっと余裕でいたから、さっきユヅキにああ言われてやべぇ…って。浮かれてた自分を反省するわ」
眉毛を下げて私を見る直人。
ヤバイ、可愛い。
色んな表情を持っている直人のその裏の顔をもっと見せて欲しいと思うわけで。
直人の腕に巻き付くみたいに身体を寄せた私にまたチラっと視線を絡ませる。
「浮かれてたんだ?」
「まぁ〜。見れば見るほどユヅキが俺を想ってるように思えて…」
そういうこと自分で言っちゃう直人も好き。
恥ずかしいことも簡単に口に出して堂々としている直人がたまらなく好き。
「それが伝わっていたなら嬉しいよ」
「あでもな…もっと貰いたい。俺欲張りなんだってちょっと思った」
優しい笑みが私を見つめる。
「欲張りなの?」
首を傾げると「そう」ドヤ顔でそう言う。
「てっちゃんでも隆二でもない、俺だけに見せる顔…いっぱいくれんだろ?」
自信満々にそう言う直人。
そんなの当たり前。
少なからず、てっちゃんや隆二にヤキモチ妬いてくれていたこともあるんだって思うとニンマリした頬が余計に緩む。
私の気持ちはいつだって直人のもの。
これから先も変わることのないその想いを全力で直人に伝え続けたい…
「うん。一生かけて伝える…つもり…」
「つもりはいらねぇ!」
真っ暗な道の途中、人通りのない道の途中、直人のドアップが私の目の前に落ちてきて…―――
目を閉じたらすぐに唇にチュっと温もりが落ちた。
あ、路チュー!
やばい路チュー!
これあり!?
あ、やばい…直人の舌…柔らかい…―――「ンッ…」漏れた声に直人の足が私の足の間に入り込んだ。
「…あーごめ。酒入ってるから理性がかけてる…」
「ふふふ。知ってる?」
「え?」
「女も色々欲張りなんだよ!」
直人の首に腕を巻きつけて身体を寄せた私をギュっと抱きしめた。
「いいよ、俺のことは誰よりも欲張りでいて…」
「直人…大好き」
「俺も、ユヅキが大好き」
直人のマンションまであと少し…
欲張りな私達の路チューはしばし続きました…
*END*