SHORT U | ナノ

 7

駅から臣と二人で歩く道。

月明かりに照らされてかっこいい臣の横顔。

一つ大きく息を吐きだして私は足を止めた。

小さな公園の途中で立ち止まった私を振り返る臣。


「あ、早かった?」


振り返った臣がそう言ってほんの少し微笑んでいる。


「臣、あのねっ…」

「うん?」


…言え、ユヅキ!

好きだよって一言…言うのよ、ユヅキ…――――「ユヅキ?」言いだせない私を心配そうに覗きこむ臣。


「ずっと後悔してたの…」

「へ?」


もう一度臣の腕を掴んだ私に、臣の足が少しだけ動く。


「本当はすごく嬉しかったの…臣に好きだって言われて…」

「…うん」

「死ぬほど嬉しかったのに、恥ずかしくて素直になれなくて…気がついたら嘘ついてた…敵わない人がいるって…」

「…哲也さんじゃねぇの?」


臣の問いかけに左右に首を振る。


「臣が好き…。すごくすごく、臣が大好き…」


…シーンとしてる。

何も言わない臣。

そうだよね、今さらだよね。

だってもう他に好きな子いるんだもんね。

その子と付き合うんだよね、きっと…―――


「嫌だよ、臣が他の子と付き合うのなんて…。私の方がずっと臣を好きだよっ!」


顔を上げたら目の前に臣の顔があって、真っ直ぐに私を見ている。

吸い込まれそうな大きな瞳と、伸びてきた前髪があがって奇麗なオデコが顔を出している。


「それ、ほんと?」


舌っ足らずな喋り方で緩く聞く臣は、どうしてか口端を緩くあげていて。


「ほんとです…」


この現実が急に恥ずかしくなって目を逸らした。

ドキドキって心臓が動いてて壊れそう。

でもせっかくゆきみさんに、哲也さんに貰った勇気…無駄になんてしない。


「俺さ、いるんだわ、すっげぇ好きな女。そいつさ、すっげぇ馬鹿みたいに強がりで意地っ張りで。何でそーいうこと言っちゃうわけ?っつーようなこと平気で言うの!けどそいつ、みんなが嫌がる仕事引き受けたり、率先して早く来たり…誰にも分かんないような所で努力してんだよね。いっつも目つき悪いのに、笑うとすっげぇ可愛くて…やっぱ好きなんだわ…って。諦めらんなかった…―――ユヅキのこと」


…ギュっと臣の手が私の手を強く握り返す。

どうしよう、嬉しくて泣きそう。

もうダメだって、玉砕覚悟で言ったのに…ズルイよ臣。


「泣いてるユヅキも可愛いよ」

「…臣…」

「でも俺、ユヅキの笑顔がやっぱすっげぇ好きだからさ…その笑顔、ずっと俺にくんない?」

「…うん」

「俺のユヅキになって…」

「臣っ!」

「わっ!」


ガバって臣に抱きついた。

小柄な私をすっぽり包み込んでくれる臣の温もり。

やっとやっと手に入った。


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