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結局のところ、お酒好きの人達はこの場が楽しくて。
「二次会行く人〜?」
啓司さんの言葉に直人さんもそっちに行って。
ゆきみさんは私の所に来て「ユヅキ…」路地裏に引っ張られた。
「ユヅキ、いいの?」
「…はい」
「てっちゃんモテルよ?」
「え?」
「あんなのと付き合ったら不安だらけだよ」
「そう、かもしれないですね…」
でも私にとっては臣が全てで。
「直人さんを一途に愛してるゆきみさんが羨ましいけど、やっぱり私には同じようにできないです…」
私の言葉にゆきみさんまで泣きそうな顔をしていて。
「ゆきみ行かないの?」
そんなゆきみさんを迎えに来る直人さん。
「直人…」
ゆきみさんは直人さんを呼ぶと、視線を私に移した。
何か言いたげなその瞳を見つめ返す私にニコっと微笑むと直人さんの方へ向き直す。
プランとした直人さんの腕を引いて、それからゆっくりと続けた。
「私、直人と二人きりで飲みたい…」
「え…ゆきみ?」
「今日は二人だけがいい…」
参ったな…って顔の直人さんだったけど、一瞬で眉毛を下げて八重歯を見せた。
「そーいうの、俺からちゃんと言うから…」
ポンポンってゆきみさんの背中を叩くと「ちょっと待ってろ」そう言って啓司さん達の方へと小走りで行って。
「すっげぇ緊張した…」
今にも倒れそうなゆきみさんに思わず私も笑みが零れる。
「今のは、勇気いりますよ…好きな人ですもん」
「私だって自信があるわけじゃないよ。でもやっぱり好きな人…って思い浮かべるのは直人しかいないの。直人が私以外の人を想っていたとしても、私の気持ちは真っ直ぐ直人だけでありたい…―――その気持ち、ユヅキにも持ってて欲しいから…」
だからわざわざ私の前で直人さんを誘ったんだって。
臣が私以外の人を想っていたとしても、私の気持ちは真っ直ぐに臣だけ…―――
「あ、哲也さんっ!あの、ご、ごめんなさいっ!私本当は珈琲飲めないんですっ!紅茶派でっ…だから、美味しい珈琲飲めませんっ!ごめんなさいっ!」
ゆきみさんの言葉で目が覚めた。
やっぱり私も一度ぐらいは素直になりたい!
「全く。本当ユヅキは素直じゃないんだから。今度は一緒に飲みに来いって。紅茶派のユヅキでも飲める美味いの淹れてあげるから」
何故かお見通しの哲也さん。
「ほら、俺の気が変わらないうちに行けって!」
ポンって背中を押してくれた哲也さんは、ちゃんとその行先が分かっていたんだろうか…
「ユヅキ?」
「臣、送って!」
ギュっと鍛え上げられた臣の腕に触れた。