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「え、臣付き合うのっ!?」
気まずい空気も特になく。
健ちゃんが心配そうに「大丈夫かぁ?」って聞いてくれて「あ、うん」小さく答えたら「よかった、よかった」って頭を撫でてくれた。
哲也さんはちょっとだけズレて電話をしていて。
仕事、忙しいのに今日来てくれたんだって思うと胸がギュっと痛い。
そうやって鍋を囲んでまた話し始めたら少しの後、隆二の声に視線を臣に移した。
「なに、なに?恋話?」
敬浩さん達が面白そうに聞いて。
「や、まだ分かんない…つーか…」
少し照れくさそうに答える臣に心臓が鷲しづかみにされた気分だ。
別に自惚れていたわけじゃない。
今でも臣が私のことを好きだって思ってるわけないって…
頭では分かっていたけど。
割り切っていないのは私で。
臣に今でも私を好きでいてほしいって思っているのは私なんだって。
「臣が告白したら誰も断らないでしょ!」
ニコニコスマイルで隆二が言った瞬間、臣はチラっと私を見た。
ドキンっと胸が高鳴る。
「いや既にフラれてるし俺…」
「えっ!?そうなのっ!?誰だよ、臣のこと振った奴、見てみたい!」
隆二の言葉に臣がまた私を見て小さく笑った。
私のこと言うことはないって思ったけど…
でも私を見て小さく笑う臣は、やっぱりもう私への気持ちなんてないわけで。
「哲也さん…」
今ほど電話を終えた哲也さんの所に行く私を、臣もゆきみさんも見ていることに気づかないフリ。
「ん?」
「お仕事忙しいのに来ていただいてすみません」
「どうしたの、ユヅキ…」
「哲也さんの珈琲…飲みたいです」
馬鹿なことしてるって分かってる。
でも苦しい。
臣をこれ以上想い続けることが苦しい…
どうしたらいいか分かんない、でも…―――差し出してくれた手を掴んだらダメだろうか…。
…ポンっと哲也さんの大きな手が私の頭を撫でる。
しゃがんで目線を私に合わせる哲也さんは文句なしの美男。
「喜んで!」
フワリと私のことを抱きしめた。