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「ごめんっユヅキ!マジでごめんっ!」
深々と頭を下げるけど。
「いいよ、仕事じゃ仕方ないし、平日だし」
物凄く楽しみにしていたってわけでもないし。
まぁ二人で過ごせたらいいなーとは思ってはいたけど、それ以上にナオトはいつだって私をその大きな愛で満たしてくれているから彼の出張に不満なんてこれっぽっちもなかった。
「必ず電話するからさ」
「うん、ありがとう!待ってるね」
ポンッてナオトの胸をスーツの上から手で叩くと、ちょっと照れたように微笑んだ。
七夕の夜を一緒に過ごせないのは、昔も今も同じになっちゃったなー。
それでも私は何となくナオトと繋がっている感じがして、やっぱりいつもより沢山の料理を作ってしまった。
天気予報通りの曇り空の今夜。
アパートのベランダから夜遅く、空を見上げていた。
帰りにスーパーで買った折り紙を縦に切ってそこに願いを書いた。
―――ナオトとずっと一緒にいれますように。
―――ナオトが幸せでありますように。
―――ナオトが健康でいられますように。
―――ナオトの仕事が順調でありますように。
「…やだ。ナオトのことばっか!」
思わず自分で書いた短冊を見て爆笑してしまう。
歴代の恋人たちがどうだったのかなんて忘れるくらい私はナオトに夢中で、ナオトしかいなくて。
もしも本当にナオトと何年も逢えない環境にされてしまったのなら耐えられない気がした。
最後の短冊を書いた私は、それを手に持ってベランダに出るとユラユラと空に掲げた。
風に揺れて青い折り紙が揺れているけど、空はグレーでやっぱり星は見えない。
「ナオトー逢いたい…」
一言空に放った瞬間、反対側の手に持っていたスマホがブルルと振動する。
待っていたナオトからの着信だった。