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「中止ですかね…」
会社について眞木さんとたまたま廊下で会った私が残念そうにそう聞く。
書類を抱えて会議に向う途中っぽかった眞木さんは、それでもちゃんと足を止めて私の声に耳を傾けてくれている。
「今夜ね、どうする?中止だったら俺ん家来る?」
サラっと言ったんだ。
え?
思わず聞き逃しそうな勢いで。
ポカンって何も言えない私の肩にポンって手をついて「考えといて」耳元で小さく囁いてからパチンってウインクをされた。
トスって壁に背をついてズズズズ…って落ちそうになるのを必死で堪える私にクスって微笑んだ眞木さんは、「じゃあまた連絡する」そう言って爽やかに廊下を歩いて行く。
…なに?
なんであんなにかっこいいのっ!?
もう誰に見られたって構わない!って気持ちでその場で大きくジャンプをした。
眞木さん家…え、どうしよう私今日勝負パンツだったっけ?
慌ててトイレに駆け込んで自分の下着を確認するも、最初からその気だったのか?って自分を褒めてやりたいぐらいの気合いの入った下着で。
その場でLINEを開いて【行きます!】一言眞木さんに送ったんだ。
すぐに既読になって【そう言うって分かってたよ。じゃあそのつもりで!】…その文章を見ただけで顔が真っ赤になっていくんだった。
そのつもりって、そのつもりだよね…。
ああヤバイ!!
【妹よ、今夜は私帰らないから!】先走ってそんなLINEを送ってみた。
勿論仕事中の妹がすぐに既読になることもなく、この熱い身体が落ち着くまでしばらくの間、トイレの個室から出られなかった。