SHORT U | ナノ

 面倒くさい奴*7

こんな予想外の展開に涙目で健ちゃんを睨む。だけどそんなのお構い無し、むしろ慣れっ子です、みたいな顔で健ちゃんは私の肩にそっと手を添えた。そこに顔を埋めるようにおでこをくっつけて「ユヅキ、」小さく私を呼ぶ。

ドキドキして、何が何だか分からなくて、「なによ、」ぶっきらぼうに答えると、健ちゃんがゆっくりと顔を上げた。

優しくて真剣なその表情にますますドキドキが増すのが分かった。


「俺もな、お前の素直になれへん性格は理解してるつもりや、これでも。けどな、ほんまに俺ユヅキちゃんが好きやねん。今更遊びの恋愛するつもりもないねん。」


思わずごくりと唾を飲み込みそうになるぐらいな真剣な顔。瞬きすら惜しい。


「ほんまに幸せになりたかったら、覚悟決め。一回でええ、素直になれや。ええか、たった二文字や、それだけでええよ。」


そこまで言うと健ちゃんはニッコリと微笑んだ。肩にあったその手は少しだけ角度を変えて私の頬に触れる。


「俺んこと、好きやろ?」


確信的な健ちゃんの問いかけにもうダメだと思った。これ以上自分の気持ちに嘘なんてつけないし、こんなになってでも尚、こんな私の気持ちを理解して受け止めてくれる人なんて、この先健ちゃん以外に出会えない...と。

熱く見つめる健ちゃんの瞳に自分が小さく映っている。


「...好き。」


そう答えた瞬間、その言葉に想いが溢れてポロリと涙が零れてしまう。

そんな私を、


「ほんまに面倒くさいやっちゃな。」

――――――そう言った目の前の健ちゃんは、軽々と私をその腕の中に閉じ込めたんだ。


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