▼ 面倒くさい奴*7
こんな予想外の展開に涙目で健ちゃんを睨む。だけどそんなのお構い無し、むしろ慣れっ子です、みたいな顔で健ちゃんは私の肩にそっと手を添えた。そこに顔を埋めるようにおでこをくっつけて「ユヅキ、」小さく私を呼ぶ。
ドキドキして、何が何だか分からなくて、「なによ、」ぶっきらぼうに答えると、健ちゃんがゆっくりと顔を上げた。
優しくて真剣なその表情にますますドキドキが増すのが分かった。
「俺もな、お前の素直になれへん性格は理解してるつもりや、これでも。けどな、ほんまに俺ユヅキちゃんが好きやねん。今更遊びの恋愛するつもりもないねん。」
思わずごくりと唾を飲み込みそうになるぐらいな真剣な顔。瞬きすら惜しい。
「ほんまに幸せになりたかったら、覚悟決め。一回でええ、素直になれや。ええか、たった二文字や、それだけでええよ。」
そこまで言うと健ちゃんはニッコリと微笑んだ。肩にあったその手は少しだけ角度を変えて私の頬に触れる。
「俺んこと、好きやろ?」
確信的な健ちゃんの問いかけにもうダメだと思った。これ以上自分の気持ちに嘘なんてつけないし、こんなになってでも尚、こんな私の気持ちを理解して受け止めてくれる人なんて、この先健ちゃん以外に出会えない...と。
熱く見つめる健ちゃんの瞳に自分が小さく映っている。
「...好き。」
そう答えた瞬間、その言葉に想いが溢れてポロリと涙が零れてしまう。
そんな私を、
「ほんまに面倒くさいやっちゃな。」
――――――そう言った目の前の健ちゃんは、軽々と私をその腕の中に閉じ込めたんだ。