SHORT U | ナノ

 面倒くさい奴*2

勝手に冗談にしたのは私の方。だけどその日以来私の中では健ちゃんって存在がどんどん大きくなる一方だ。


「山下さーん!」


営業の健ちゃんと、管理課のスタッフさんは絡みが多い。勿論ながら同じ管理課の私もそれなりに健ちゃんと仕事上の絡みは沢山ある。

あれ、今まで感じなかったのに。隣の席の子と健ちゃんが話していることすら嫌なんだけど。もしかするけどこれってヤキモチ!?私ってば妬いてる!?

自己嫌悪に襲われそう。

話が終わると当たり前にこちらに飛んでくる健ちゃんの視線にホッとしていたら「ユヅキちゃん、花見せぇへん?」なんてあっけらかんと言われた。


「お花見?どこで?」
「目黒川沿い。」
「...私重度の花粉症なので無理。」
「夜桜しよーや、むっちゃ綺麗ねんで、桜。今しか見れへんねんで、桜。」
「行かない。他、誘えばいーじゃん。」


ちょっと強めに言うと隣の席の亜芽ちゃんが「山下さん、あたし行きたい!」なんて手を挙げた。亜芽ちゃん、彼氏いるよね?大丈夫だよね?優しい健ちゃんは、この場で亜芽ちゃんに恥をかかせることなく、その夜、二人で夜桜を見に行った、らしい。


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翌日亜芽ちゃんは熱が出たからってお休みの連絡が入って、健ちゃんは取引先直行だった。


「ジンジン、お昼行こ!」
「...ええですけど、なんか企んではります?」
「いいから。」


後輩の陣くんを誘ってランチに繰り出した。


「全然食べてへんやないですか。どーせ健二郎さんのこと、ですよね?」


ナンがモチモチしてて美味しいカレー屋さんに入って早速食していると目の前に座った陣くんが若干の苦笑いでそう言ったんだ。

悔しいことにお見通しってわけだ。


「亜芽ちゃんて、彼氏いたよね?」
「いるんちゃいますか?」
「そう、だよね。」
「聞いたらええやないですか、亜芽ちゃんにも健二郎さんにも。僕に聞いてるみたいに。」


簡単に言うけど、それができないから苦しいんじゃない。俯く私に陣くんがナンをおかわりする。


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