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「ねぇ健太の誕生日のいちごタルトってマイコちゃんのリクエストって聞いたんだけど、そうなの?」
ツアーの移動中、新幹線から降りる時にたまたま居合わせたやましょーにそんな言葉をかけられた。
瞬きを繰り返す私にやましょーは一歩近づく。
「それってさ、マイコちゃんもしかして誕生日近かったりする?」
なるほど。朝海ちゃんだ、健太に言ったのは。それでやましょーの耳にはいっ、「え、朝海ちゃん、健太くんに言っちゃったの!?」いちおサプライズで動いてるわけで。
きっと健太本人も分かってはいるんだろうけど。
「いや、朝海ちゃんから直接聞いた。」
「...あ、そうなんだ。...じつは私も健太くんと同じ日なの。」
「マジか!んじゃみんなでお祝いしねぇとな!」
「いやいや、ほんと私そーいうのは、」
「なんで?俺達マイコちゃんいてくれて本当助かってるし、いつもほんと、面倒かけてるし。ね!」
やましょーにそう言われると嬉しい気がする。だけど、不意にギュッと腕を掴まれる。
「なんの話?」
「え?あーマイコちゃんの誕生日。健太と同じ日なんだって。」
やましょーがそう言うと、思いっきり陸ちゃんが目を大きく見開いた。
「え、27日!?」
「...うん。」
「もーなんで黙ってるかなぁ。危うく失態じゃん、大事なマイコさんの誕生日スルーするなんて。」
ぷうって頬を膨らませる陸ちゃんが可愛くて、話そっちのけで微笑むと、やましょーがそんな私達を交互に見て「ふぅん。」って意味深につぶやいた。
やましょーがそのままいなくなると陸ちゃんが小さく溜息。
「ごめん、なんか妬いた。やましょーと二人で話してんの。」
コツって私の頭に顎を乗せる陸ちゃん。
「り、陸ちゃん?」
「うん?」
「あのみんないるから。」
「うん。分かってる。あと10秒だけ、」
そんなこと言われたら何も言い返せないよ。