▼ その声を聞かせて7
「わ、これも美味しい!やっぱり大将のお料理毎日食べたくなるー!」
「ユヅキちゃん、俺んとこ来る?そしたら毎日作ってあげるよ?」
「却下。俺のっす!冗談でも言わないで!」
ちょっとだけ冷めた目で大将を見る隆二くんが愛おしい。
勿論ながらエイプリルフールも冗談もない、私と隆二くんのお付き合い。
あの日からずっと続いている。
「おいおい冗談も通じねえよ、隆二の奴!ユヅキちゃん、こいつのどこがいいの?」
急に私にフラれて思わず隆二くんを見つめた。
どこが?って、「全部…」場所とか仕草とかそんなんじゃなくて、隆二くんって存在が愛おしい。
でも強いて言うなら…
「でも、声かなぁ…一番好きなのは…」
「えっ、声なの?」
隆二くんも吃驚した顔で私を見る。勿論その顔も大好き。えっちな指も舌も優しい目も。
「声好き。その声で呼ばれると、きゅんってする…」
ニッコリ微笑むと隆二くんがまたビールを一気飲みした。ダンってジョッキをカウンターに置くと「大将お会計して」え、まだ来てからそんなにたってないよ?
驚く私に大将は優しく微笑んで「今日は奢るよ、隆二!」え、なに、なんで?
「ご馳走様です!」
きっちり頭を下げると隆二くんは戸惑う私の手を引いて、家までまっしぐら。
歩いて3分もかからないからすぐに着いちゃって。
「隆二くん、どうしたの?」
「無意識で煽るとかずりー」
「え?」
「ユヅキ、好きだよ、ユヅキ…」
壁に押し当てられてそんな言葉。
隆二くんにこうやって名前を呼ばれると、本当に胸の奥がキュッてする。
迷うことなく繰り返されるキスの合間にも「ユヅキ」って何度も呼ぶから、それだけで幸せで。隆二くんに抱きつく私をリビングのソファーまで一気に運んだ。
「ほんと、可愛いんだから、ユヅキさんは」
「ンッ…隆二く…」
息が上がる濃厚なキスと、甘い夜。
その声は私だけのもの。
何度だって聞かせて欲しい―――「ユヅキ愛してる」私だけに愛の言葉を。
*END*