▼ その声を聞かせて6
「だけど隆二くんと2人で食べるご飯が美味しくて。大将の話も面白くて、私いつの間にか隆二くんに誘われること望んでた。絶対に好きにならないなんて、無理だった。告白を受け入れたらヤリ捨てされちゃうかもって思うと悲しくて、ずっと心の中モヤモヤで、仕事にも集中できなくてミスって…。お願い、もうフって、私のこと。そしたら諦めるから…」
私の言葉にでかでかと溜息をつく隆二くんは、その場で私をちょっとだけ強引に抱きしめた。
強烈にこの腕の中は心地よくて、すごく苦しいよ。
「だから泣いたんですね、俺のこと好きって言いながら。あんな複雑な顔されて、手出せなくなったんだから俺。責任とって貰いますよ?」
もうなんでもいい。全部バレちゃったからもう、終わりだ。責任なんて今更。
「………」
隆二くんが本心出すのをただ待っていた。
バレてるなら仕方ねぇ、ヤラセてよって。
「アイツらはそーいうことばっか言ってるからあの時は適当に話合わせてただけです。言っとくけど俺、遊びの恋愛する気サラサラないんで。遊び程度だって思うならもうとっくにヤリ捨てしてるでしょ。―――誰にも取られたくなかったんですよ、ユヅキさんのこと。だから邪魔すんなって言ったんです。俺なりの精一杯の強がり。変な事聞かせちゃってごめんね」
よしよしって、頭を優しく撫でてくれる。
これは、嘘?ほんと?
「でも告白されたの、4月1日だった…だからエイプリルフールかな?って…」
「勘ぐりすぎ!一応繁忙期避けただけっす。エイプリルフールの嘘ならその日に言うでしょ!俺言った?冗談で告ったなんて?」
「…言ってない」
「当たり前じゃないすか、本気なんだから。何年待っても嘘だなんて言わないよ…」
トクン、トクンと心臓が音を立てているのが分かる。
隆二くんが言ってることが本当なら私達は晴れて両想いだ。
「ほ、ん、と?ほんとに私のこと好きなの?」
「好きだよ、本気で。ユヅキさんが信じてくれるまで何度でも言うよ」
心地よい声と温もりにやっと胸のつかえがとれたようだった。
「…もう1回…」
私が言うとクスッと笑ってオデコがくっつく。
「ユヅキさん、好きだよ。大好き」
「ふふ、もう1回…」
「好きだよ、すげぇ。ちゅーしたいぐらい好き…」
やば、ぶっ込んできた。
頬に触れる指がゆっくりと唇をなぞる。
見つめる瞳は熱く揺れていて、その指を捕まえてギュッとすると隆二くんの目が軽く見開いた。
「なに、ダメ?まだ不安?」
「だって緊張して…」
「すぐ慣れるって、」
「……うん」
「可愛い…」
隆二くんの顔が想像より素早く私に近づいて、ちゅって音と共に唇が重なった。
触れ合う寸前が最大級緊張して、唇が触れると、胸の奥がキュンって小さく音を立てる。
なんともいえない幸せな気分で身体ごと包まれているようで、隆二くんの腕に触れるとパクッと唇を甘噛みされる。
―――心地よい温もりとキスに、しばし酔いしれていたんだ。