▼ その声を聞かせて2
デスクに戻って無心で仕事をしていた。
その頃にはさっきの出来事なんてすっかり忘れていて。あー甘いもん食べたい、チョコ食べたい!引き出しを開けてストックのお菓子を選別していた時だった。
「ハハ、いっぱいっすね!」
「え?」
「お疲れ様です。これどうぞ、一ノ瀬さん好きですよね?」
…私がよく売店で買ってるアーモンドチョコをさり気なくデスクに置いた隆二くん、もとい、今市。
でもさっきのを聞いてたなんて言いたくないからここはいつも通りだよね。
「いいの?」
「はい。一ノ瀬さんの為につい買っちゃったんで。よかったらこれもどうぞ!」
スタバのカップをデスクに置いた。
「え、これも?」
「はい。よく分からなかったんだけど、一ノ瀬さんいつもミルクティー飲んでるからこれも一応ミルクティーっす!」
「うそ、」
「あ、俺当たり?喜んでくれてます?」
「そりゃ、だってこれ、私が好きなのだもん」
「マジで?やべぇ、嬉しいかも。一ノ瀬さん今日はまだやります?」
「…え?」
「飯、行きません?」
…きた。あーあ、結局私もカモかー。
隆二くん、それで本気だったらすごいよかったのになー。なんかガッカリ。勿体ない、真剣に恋愛すればいいのに。
なーんて心の中で思いながらも、見つめる先の隆二くんの優しい顔は、騙されてもいいのか?なんて思いたくなる。
「…いい、けど」
「やった!んじゃ俺改札で待ってますね!」
「………」
マジで?私、行っていいの?
隙を見せなきゃいいのよね。よし、徹底的に受けてたとうじゃん!見てろよ、今市隆二!