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そんなことを思いながら一日を過ごしたあたし。
放課後、当たり前にダンス部に行った直人。
今日もギャラリーは沢山で、みんなが直人を見に行っているに違いない。
あたしはというと、級長のせいで先生に頼まれごと。
来週の遠足のしおりのホチキス止めを手伝わされていた。
「これ終わったら夏休みかー…」
思わず零れた独り言。
世間一般的には高校生の夏休みなんて遊びほうけているんだろうけど。
勿論あたしだって友達と遊びに行く約束はしている。
だけど花火大会とかお祭りとか海とか、そこに直人が一緒にいたらどんなにいいだろうかって。
直人達男子はしょっちゅうみんなで遊びに行ってるけど、なかなかそこに女子を連れていってはくれない。
「花火大会行きたいなー」
そんな独り言が直人に届くこともなく、しおりのホチキス止めを終えたあたしは鞄を持って下駄箱へと向かった。
シーンとした校舎内。
外ではミーンミーン蝉の鳴く声が聞こえて、眩しい光が長い廊下を照らしている。
いつまでたっても素直になれない自分に嫌気がさしながらも、この関係を壊すことが怖いと思ってしまう弱い自分もいて。
そんな弱さに勝てない心がやっぱり嫌だった。
でも今まで何もなかったのに今更何かがあるなんて考える方がおかしくて。
だから下駄箱を開けた瞬間、ローファーの上にこじんまりと置かれたその白い紙に目が点になった。
「なんだこれ」
紙を取って開くもののそこには文字の一つも書いていない。
これまさか、ラブレターじゃないよな。
「まさかね…」
思わず笑いがこみ上げた瞬間、後ろからドンッ…下駄箱に向かって手が伸びてきた。
吃驚しすぎて声も出ないあたしの背中にぴったりとくっついてるのは―――――
「好きだよユヅキ」
―――直人だった。
紙を握ったまま棒立ち状態のあたしの肩に顎を乗せる勢いで耳元で直人が言葉を繋げる。
「もういい加減俺の彼女になってよユヅキ」
顔は見えないけど、声と喋り方は確実に直人で。
部活は?とか、なんで?とか、色々聞きたいことはある。
でもそんなの今はどーでもいいことかもしれなくて。
「直人…」
「イエスなら振り返ってゆっくり目閉じて」
ドキンと胸が大きく脈打つ。