▼ チョコより甘い時間5
「泊まるって、ここに?」
「うん。もう離れたくない、ナオト先生と…」
意気込むあたしの前、テレビの上に置いてあった卓上カレンダーを先生があたしに差し出した。
え、なに?
キョトンと先生を見ると「今日ここな…」そう言って今日の日付を指差した。
「卒業式は?」
そう聞かれて「3月9日です」そう答えた。
小さく頷いた先生は何故かあたしの頭を撫でる。
ニコっと優しく微笑んで…
「あと1か月もないでしょ。たった23日の我慢だから、それまでいい子で待てるよな?」
先生の声が優しくて、先生の表情も優しくて…あたしはニコっと微笑んで「無理です」そう答えた。
ガクンとコント並に崩れるナオト先生、可愛い。
だって好きな男と二人っきりなのに…
「一ノ瀬…」
「ナオト先生、あたしのこと好きってこと?卒業まで待ったら付き合ってくれるの?」
ドキドキしながら先生の言葉を待つ。
「毎日毎日居残りさせられた俺の気持ちもちょっとは考えろよなー。一ノ瀬はただでさえ可愛いんだから、いくら俺が教師って立場でも…嬉しいって感情は持っちまう。23日後に俺の気持ち、教えてやるよ」
「うそ、ドS!?」
あたしの言葉にニヤリと口端を緩めた。
悔しい!悔しい!悔しい!!
でも好き。
「笑ってごまかすナオト先生ずるい。でも好き。だからあたしは我慢しない。23日間バレなきゃいいんだよ…」
「え、」
想定外だったのか?あぐらをかいて座っていた先生の肩に手を添えて、正面からゆっくりと押し倒した。
サラリと先生の髪が靡く。
近づくあたしに「ちょっ、待てよっ!」昭和のテレビドラマで聞いたような台詞が飛んできた。
「大丈夫、あたし秘密の恋とかできるから。23日なんてあっという間だし、そもそも学校来るのあと10日でしょ!ね?」
「こら早まるな!」
「好きだよナオト…」
呼び捨てで呼んでみたら、思いの外真っ赤になったナオト先生はそのまま黙ってあたしを受けとめてくれた。
諦めた?なんでもいい。