▼ チョコより甘い時間3
日が暮れるにつれて気温が下がっていって、とうとう降り出した東京の空の下、雪が。
制服のまま、凍え死ぬんじゃないかって思うのに、帰れなくて。
一目ナオト先生の顔が見たくて。
フラれてもいいやって。
「一ノ瀬…?」
聞こえた声に顔をあげると驚いたナオト先生がこっちを見ていて。
カツンって音に視線をズラすと、先生の後ろに女がいた。
その瞬間、自分がここにいることが恥ずかしくて惨めで。
ナオト先生大好き!
用意していた言葉は簡単にどこかに消えた。
泣いたら余計に惨めなのに、悔しいのか悲しいのか、涙が溢れてきて、零れ落ちないようにグッと喉の奥をしめる。
「お前なにやって」
先生の言葉を遮ってあたしはアパートの外階段を駆け下りた。
そのまま走って逃げようとした手首を思いっきり掴まれて、
「冷たいじゃねぇか、もしかして待ってた?」
ナオト先生の瞳が揺れる。
後ろに女連れてるくせに、そんな切なそうな顔ずるいっつーの。
あたしが一人膝を抱えて待っていた小さな幸せな時間が簡単に崩れる。
所詮、先生と生徒なんて結ばれない世の中だ。
「待ってるわけないじゃん!」
そう言いたいのに、寒くてガタガタ震えちゃって声すら出ない。
こんな惨めな姿、これ以上見られたくない。
首を振ったあたしの瞳からポロりと我慢できず涙が頬をつたって先生の腕にポチッと落ちた。
その瞬間、ナオト先生の顔が歪んであたしを軽く抱き寄せた。
「離してっ」
ようやく出せた声はガラガラで。
先生から離れようとするあたしを、その力強い腕でギュッと閉じ込めたんだ。
あたしのこと、好きでもなんでもないくせに、酷い先生。