▼ イニシャルH5
「あんっ、もっとぉっ…」
わざとなのか高音を出す直ちゃんの股間に手をあてる。
「ちょっ、なんだよっ!?」
慌てて片肘ついて頭をあげたからその隙に直ちゃんの腕の中にスルリと入り込む。
「だってキスしたくなった…」
私の言葉につぶらな瞳を大きく見開いて口端を緩める。
困ったように眉毛をさげた後、腕の中に私を閉じ込めると、そのまま着ていたコートごと私を隠した。
空気に熱を感じて、至近距離で直ちゃんを見つめると「小悪魔だなぁ、ユヅキちゃんは…」そんな言葉と共に落ちてきた甘いキス。
唇を緩く重ねて舌をねじ込む直ちゃんに合わせてゆっくりと舌を絡めた。
生暖かい直ちゃんの舌がチュルリと音を立てて私の口内を動き回る。
時折漏れる「ンッ」て声に直ちゃんが鼻で笑って答える。
あーこのまま…って気持ちになりそうな私の理性は、直ちゃんの手がゆっくりとコートの中でセーターの中に入り込んだ瞬間に解き放たれた。
「こらっ!そこはダメ!」
そう言うと、困った顔で苦笑い。
うんうんって頭を振る直ちゃんの顔には「分かってる」って書いてはある。
書いてはあるけど―――――「止まんねぇ…」そう言ってまた甘く唇を重ねる。
心地良さが一気に私をまとって、目を閉じたら直ちゃんの腕が私の背中に回された。
ギュッと距離を縮める直ちゃんの足が私の黒いパンツに絡まって…
「ユヅキー抱きたい…」
甘えた直ちゃんの声にようやく唇が離れた。
ハァってちょっと呼吸を乱せてる直ちゃんは、心なしか腰を引いていて。
だからそこに手を触れると、当たり前のように覚醒して硬くなっている直ちゃんがいる。
「あーそのまま…脱ぎてぇっ」
「ダメ!」
「燃え上がった俺の気持ちはどうしたらいいのよ?」
「そんなこと言われてもダメ!クリスマスに青姦なんて笑えない!」
「まぁそりゃそーだ。でもユヅキが煽るからさぁ…僕シたくなっちゃったぁ」
ぼくって、ずるーい!
こんな時だけ可愛さアピールして。
男らしくてかっこいい頼りになる直ちゃんも大好きだけど、子供みたいに笑う直ちゃんだってめちゃくちゃ好きなんだから。
ブランケットの上、起き上がって小さく深呼吸をすると、私はご馳走をパクパクと食べ始める。
そんな私を見て微笑んだ直ちゃんは口をあーんって開けて待っている。
「俺にも食わして」
「…もう」
仕方ないなーなんて思いながらも私に甘える直ちゃんがどうにも可愛くてフォークで指しては直ちゃんのどら焼き型の口に運んだんだ。
「あーもう食えねぇっ!」
コロンって再び私の膝の上に頭を乗せる直ちゃん。
だけど、空を見上げてキョトンと視線を私に移す。
「なぁ、上見てみ?」
「え?上?」
顎でクイッて視線を空に向ける直ちゃんに続いて私も空を見上げるとさっきまで晴れていたのにどんより曇っている。
そういえば、急に冷え込んだ?
「早めに切り上げて暖かいとこ行こうぜ」
「うん。今年も、降っちゃうかな…雪」
私の呟きに微笑む直ちゃんは、起き上がって荷物を纏め始めた。
車に戻ってエンジンフル回転。
ふわりと直ちゃんの腕が伸びてきて私を軽く引き寄せた。
「大丈夫?寒くねぇ?」
「うん。寒い…」
「だよね、んじゃもう仕方ねぇ、脱いで?俺肌であっためる!それしか生きる術はねぇ!!」
着ていたコートを脱いでニヤリ微笑む直ちゃん。
「死なないからっ、こんなところじゃ!」
「遠慮すんな、こっちおいで」
悔しくもキュンとしてしまう自分に内心バチコンっと突っ込みを入れつつ「直ちゃんエロ目なんだもん!」そう言って距離を取った。
「ちょっとー俺いたって真面目よ!」
そう言う口端も緩いから。
でも至近距離で目が合って結局直ちゃんのキスに負けてしまう。
だってそんな目で微笑まれたら何も言えなくなる。
好きって気持ちが溢れて止まらない。
「ンッ直ちゃんっ…大好きっ」
「え?なに?なんだって?」
「もー。私だけ言わせるのぉ?」
「ふはっ!そんなわけねぇだろ。こっち見て」
直ちゃんが喋りながら私の頬を指でプニプニ触れていて。
エロ目は変わらないけど、こうして至近距離で見つめ合うのもそれほど多くない?
肌綺麗…
やっぱり髭の剃り残しがちょっと気になるけど。
コツっとオデコを重ねてチュって甘いキスを落とすと低い声で囁いたんだ。
「好きだよユヅキ。愛してる…」
胸の奥がキュンとした。