SHORT U | ナノ

 イニシャルH2

どうしよう!



「あの、あの、直己くん、私ねっ」

「ユヅキちゃん!ランチ?」



間に合わなかったよ、直ちゃんごめんね。

何の迷いもなく直ちゃんが足軽に私達の前に現れた。



「かっ、片岡くん!偶然だねっ!」

「んー。外からユヅキちゃん見えたから!俺も一緒にいい?」



直己くんを見てにっこり微笑む直ちゃんに、直己くんは「もちろんですよ、直人さん」って微笑んだ。

スッと私の隣に座る直ちゃんは、椅子に座るとテーブルの下でギュッと私の手を握りしめた。

ドキンとまた大きく胸が高鳴る。



「なんの話してたの?」



そんな問いかけをするもんだから、思わずテーブルの下の直ちゃんの手を抓った。

変な顔で直ちゃんが私をチラリと横目で見たけど、答えられるわけもなく。

そんな私に直己くんが「じつは、クリスマスのお誘いをしてました」いとも簡単にあっさりと答えたんだ。

あー笑えない!

キョトンとした直ちゃんは小首を傾げて私を見る。

何言ってんの?って顔で。



「え?」

「ほ、ほら、直ちゃん!…注文、注文!」

「え?ああ、うん。俺もユヅキと一緒でいい!」

「一緒ね、一緒」



ピコンと店員さんを呼ぶボタンを押すとすぐ様注文を取りに来た。

一息ついて直己くんに視線を向けると、困ったように笑っていて。



「なんだ、そーいうことなんですね」



分かりきったような顔に背中を冷や汗が伝う。

そーいうことって、なにっ!?



「二人共、わざとですか?」



直己くんの言葉に、直ちゃんと目を見合わせて「「なにが!?」」思わず揃った声に、直己くんが吹き出した。



「おい直己なんだよ?」



ムッとした直ちゃんに直己くんは涙目で続けた。



「呼び方、変わってましたよ?なんだ、ユヅキさんのストラップのNは、直人さんのNか…納得です」



優しげに微笑む直己くんにカアーっと赤くなるのが分かった。

直ちゃんと二人でお互いのイニシャルをスマホのストラップにつけてたんだけど、気づかれてたんだ。



「…まぁ、バレたなら仕方ない。あんまり社内では大っぴらにはしてないからさ。別に隠してるわけでもないんだけど…ユヅキが仕事しずらくなるのは嫌だから」

「ちゃんと守ってあげてんですね、ユヅキさんのこと。お似合いですよ、二人…」



私にもニッコリ笑顔をくれる直己くん。



「あの直己くん」

「いいです、さっきのは気にしないでください」



これ以上言うのも違うって。

直ちゃんの前だし、わざわざ答えることないって、直己くんの顔に書いてあって、少しだけ切なくなった。


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