▼ Charge4
「亜嵐…」
あたしの声にバッと顔をあげた亜嵐。
ダンスのせいで、額からは汗が流れていて…
「ユヅキ先輩…いつからそこにいた?」
あたしを見て焦った亜嵐がめちゃくちゃ可愛い。
色白の頬を赤く染めているのが嬉しい。
「え?いつからって、なんで?」
「…何も聞いてないよね?」
「なにも、ってなに?」
あたしの受け答えに亜嵐はカアーって真っ赤になって。
「なんだよ、聞いてたんだろ?」
男っぽい口調にますますドキドキする。
ちょっとだけいじけたように眉毛を下げる亜嵐の傍に近寄ると亜嵐の眼球がグルリと回る。
「一緒に帰ろっか?亜嵐」
そう言って手を差し出すといっそう赤くなっていて。
「一週間も何してたんすか?俺をおいて…」
そう言いながらあたしの手をキュっと握る亜嵐。
そこに指を絡めたら亜嵐と目が合った。
「亜嵐のために、色々研究して頑張ってみたんだけどダメだった。自分を見失っちゃって…自信もなくなっちゃって…」
「うん」
「いつものあたしどっかいっちゃって…」
「うん」
「でもやっぱり亜嵐に逢いたくて…―――きちゃった」
首を傾げるとハァ〜って亜嵐が溜息をついた。
「先輩いねぇとうまく踊れなかったよ…どうしてくれんの?」
詰め寄られてドクンっとまた心臓がうごめく。
あたしから亜嵐に近づくことはあっても亜嵐からこうして迫ってくることなんてほとんどなかったせいか、その距離に近さにあたしまで赤くなる…
「どうしてって…どうしたらいいの?」
「目閉じて…」
「えっ?亜嵐?」
「あーもう待てない!」
ふわって全身亜嵐の温もりに包まれる。
なにこれ…すごいいい匂い…。
思わず肩の匂いをクンクン嗅ぐと「ちょっと先輩、ムードぶち壊し!」真っ赤な課の亜嵐がそう言うけど、説得力なしー。
離れようとする亜嵐をギュっと抑え込んだ。
「だめ、離さない!」
「…なんか先輩のが男前だね…」
「亜嵐すき…。だいすき…。寂しくて死にそうだった。亜嵐が可愛いって思ってくれる女になりたくて、でもなれなくて苦しかったよ…」
「俺言ったじゃん。そのままでいいって…今のユヅキ先輩が、俺は好き…です」
「今更敬語いらない」
「あーごめん。ユヅキ先輩顔見せて…」
抱きしめた腕の中から顔を出して見つめるとあたしも亜嵐も真っ赤で。
「ずっと逢いたかったよ、この一週間。先輩の顔見ないと元気でねぇし、声きかないと調子でねぇ…。毎日逢いに来いよな…」
「うんうんうんっ!毎日亜嵐が好きって言いに行く!!!」
ギュって首に腕を回して亜嵐を抱きしめると背中に亜嵐の腕が回された。
「亜嵐、チューは?」
「はぁ?」
「チューして?」
「ここで…?」
「いいじゃん誰もいないんだから。してして?」
「…ばーか」
ペシってデコピンの後、「最初からそのつもりだっつーの」掠れた亜嵐の声と、初めてのキス。
胸の奥がキュンってする。
さっきまでの苦しい音とは違うキュンが奏でていて、幸せな気持ちになった。
「好きだよ、ユヅキ…」
「あたしも…」
微笑む亜嵐にもう一度小さなキスを落とした――――
*END*