SHORT U | ナノ

 Halloween night4

「なんだ、意外とどんくさいなぁ、ユヅキ!」




ファミレスからの帰り道。

私とてっちゃんとあっちゃんは同じ方向で。

ゆきなおカップルと敬浩、それから岩ちゃんは正反対の為だいたいこの二人が送ってくれる。

てっちゃんの自転車の後ろに乗っかった私にまさかのそんな言葉。

隣であっちゃんもクスクス笑ってる。




「俺達聞かないようにしてたけど思いっきり耳ダンボにしてたよね」

「そうなのっ!?って、やめてよもうー」




あっちゃんの言葉にてっちゃんの肩をポカポカ軽く叩く。




「せっかくのチャンスを無駄にするなんて。岩ちゃん言ってたじゃん!ユヅキ先輩と付き合えたらもっと嬉しいって…。わたしもって言えばよかったんじゃないのー?」

「もー簡単に言わないで!言いたくてもアンタ達のいる前で言うわけないでしょ?」




言いながらもう一度てっちゃんを叩く。




「俺聞きたかったなぁ、ユヅキの告白!」

「もうあっちゃん!人事だと思って!」

「ごめん、ごめん!でもまぁ楽しんでるけど、ね?哲也!」

「うん。いーじゃん直人とゆきみみたいに堂々とラブラブしちゃえば!」




信号で止まって振り返ってそんな言葉を飛ばすてっちゃん。

チュッパチャプスを咥えているあっちゃんとはここでお別れ。




「じゃあユヅキ頑張って!俺応援してるから!」

「…ありがとう。あっちゃんまたね!」

「うん、哲也もバイバーイ」




手を振る私に大きく振り返してあっちゃんが曲がった。




「うちのファミレス、岩ちゃんよく来るじゃん俺らと一緒に。だからそれ目当ての子、結構いるよ。コソコソ話してるのとか聞こえるし。せっかく両想いなんだから早く言いなよユヅキの気持ち。うかうかしてると誰かに取られるよ?」

「……やだ。絶対いやだ!」




分かってはいたけど、いざそういう話を聞くと心が落ちた。

私達まだ付き合ってもいないのに、岩ちゃんのこと独り占めしたいなんて。

ねぇ岩ちゃん気づいて…

私の気持ちに。



―――――そんなてっちゃんの予感は翌日ものの見事に当たってしまうなんて。




金曜日のお昼休み。

教室でゆきみとお弁当を食べていると、そこに学食から帰ってきた敬浩たち。

後ろに岩ちゃんがいるのを見て途端に笑顔になる私。

今朝は逢えなかったから嬉しい!なんて。

でもそのすぐ後ろ、てっちゃんの呆れたような顔と、数人の女子……

知らない顔だから1年?




「明日のハロウィン、岩ちゃんのクラスメイトも来たい!って、どーする?」




敬浩が見ているのは私。

待ってよ、もしかして私の返答しだい?

超困る!

思わずゆきみと目を見合わせた。

ゆきみはニコッと微笑むと、その顔を真顔に戻してから1年の女子達を見た。




「なんで?なんで知らない子と?仲間うちのパーティーだから遠慮してほしいんだけどー」




ナイスゆきみ!

思わず顔が綻んだものの、1年女子達もそうそう引く気はないのか…




「ズルイです先輩達。うちらだって岩ちゃんと仲良くしたいし、田崎先輩や片岡先輩達とも仲良くした……」




「片岡先輩」って言葉に物凄い形相でゆきみが1年を睨む。

そんなゆきみを見ててっちゃんは隠れて後ろで爆笑していて。

あっちゃんが、真面目に「まずいって」なんてジェスチャーをしているのが見えた。




「片岡先輩は特に無理です」




ゆきみがド低い声でそう言うと、直人くんはヘラヘラ笑いながらゆきみの傍にやってきて「ごめんね、彼女ヤキモキ妬きだから。俺もこいつ以外興味ねぇんだ」キュンとするような事を言うと、敬浩の背中を押して続けた。




「敬浩くん彼女募集中だから!てっちゃんと篤志くんも!」




完全に友達売っちゃってる直人くんに内心爆笑したものの、本当にうかうかしてられないって。

私は立ち上がると岩ちゃんの所に駆け寄った。

キョトンと私を見返す岩ちゃん。

そんな岩ちゃんの手を掴むと1年女子に視線を移した。




「ごめんね、今回は遠慮して!それから岩ちゃんの彼女もヤキモキ妬きだから無理だと思う!」




私の言葉にギョッと目を見開く1年。

それから岩ちゃんに視線を移して「彼女いるの?」恐る恐る聞いた。

岩ちゃんは私をジッと見つめてからコクっと頷く。




「うんいる。ごめんね。またクラスのみんなで一緒に遊ぼう!それぐらいはいいのかな?」




チラリと私を見つめる岩ちゃんに「それぐらいは仕方ないけど…」本当はあんまり絡んで貰いたくない。




「まぁ、また誘って!とにかく明日はごめん。先輩達も個人的に誘ってみて!俺を通さないで!あ、直人先輩は無理みたいだから!」




しぶしぶ帰っていく1年生。

ちょっと悪いことしちゃったかな?って思うけど、やっぱり岩ちゃんが私以外の子と仲良くするのは嫌だった。




「女ってすげーな!」




感心したようにあっちゃんがチュッパチャプスをクルクル回している。

だけどその目はニヤついて私と岩ちゃんの繋がった手を見ていて。




「あっ!」




思わず我にかえってその手をパッと離した。

離した手をふわりと握る岩ちゃんにドキッとする。




「ユヅキ先輩!中抜けしよ!」




真面目だと思っていた岩ちゃんに腕を引っ張られて、お弁当も食べ途中だったのに校舎内から連れ出された。
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