SHORT U | ナノ

 Halloween night2

がり勉岩ちゃんは自主的に塾に通っていて、あっちゃんのバイト先であるカラオケボックスで私達は時間を潰していた。




「お待たせしました〜」




ちょうどGLAYがかかって敬浩が熱唱していた時にあっちゃんが頼んだ飲み物を持って入って来たんだ。




「あっちゃん一曲歌ってってー」




ゆきみがメロンソーダを受け取りながらそう言うと苦笑いで「ダメだって」ピシャリと言う。

バイト中のあっちゃんはウエイターみたいな白黒のベストとシャツをまとっていてなかなか様になっている。




「みんなうまいけど、やっぱりあっちゃんが一番だよね〜!」




確かに。

みんなそこそこ上手いけど、あっちゃんの歌唱力は群を抜いていた。





「歌っちゃったら怒られちゃうもん、店長に!ごめんね、次一緒に行く時歌ってあげるから!」




ポンポンってゆきみと私の頭を撫でるあっちゃんにゆきみは満足げに微笑む。


岩ちゃんはどんな歌、歌うのかな?

どんな声で歌んだろう?

私、岩ちゃんの知らないことだらけだ。

もっともっと知りたいよ、岩ちゃんのこと…。

そんなモヤを抱えながら、あっちゃんのバイトが終わる時間になって今度はてっちゃんのバイト先であるファミレスに移動した。

既にシフトアフトしていたてっちゃんは私達の為に席を確保してくれていて、そこに少し遅れて塾終わりの岩ちゃんが到着した。




「お疲れ様っす!」




たったそれだけのことなのにすごく嬉しくて、私は「岩ちゃんお疲れ様!」思わず大声で叫んでいた。

そんな私に嫌な顔一つしないで笑顔を向けてくれる岩ちゃんは最高に爽やかでかっこいい。

ていうかほら、そんなアイドルみたいな外見だから、ここにいる他校の女子達が岩ちゃんをマジマジと見ている。

むーヤキモキする。

そんな視線に全く気づくことなく岩ちゃんは座る場所を探していて…




「岩ちゃん隣!ちょっと敬浩あっち行って!」




もう無理やり敬浩を退かして場所を開けたんだ。




「おい態度が違げぇぞ、ユヅキ。岩ちゃんもキラキラしすぎ!」




文句を言いつつもちゃんと場所を開けてくれる敬浩に無言で感謝しつつ、隣に岩ちゃんが座った瞬間にはもう、敬浩のことは頭の中から消えていたに違いない。

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