▼ アバンチュールは君と!4
思えば岩ちゃんはその王子様みたいな外見とはかけ離れた性格で。
簡単に言っちゃえばガサツだった。
遠目から見ているだけなら文句無しだからみんな近づいてくるけど、あまりにガサツな岩ちゃんを知って、気づくとフェイドアウトしている子も多かった。
私はというと、最初はすごいイケメン!タイプ!って思ったけど、性格を知った上で、やっぱりその気持ちは変わらなくて、でもなんだろう、岩ちゃんといる時は私も飾らないでいられるせいか、そんな意識した関係じゃなかった。
だけど節々に岩ちゃんの気持ちを感じることもあったりで。
それこそ自惚れたら馬鹿を見る!って、自分に恋じゃないって言い聞かせていたのかもしれない。
「だって、眞木さん彼女と別れたなんてチャンスだったのに」
「だから邪魔したの!分かるよね?俺の気持ち…」
ハンドルに伏せていた顔をこちらに向けた岩ちゃんは真剣。
初めて見るその表情に途端に私の心臓がドキッと高鳴る。
本気……なの?
ジッと見つめて一言「分かんない」そう答えると「言ったな?」岩ちゃんが身体を起こして真っ直ぐに私を見つめる。
ドクンと胸が締め付けられる。
え、え。なに?
近づく岩ちゃんからほんのり遠ざかろうとした私を伸ばした腕で捕まえる。
「岩ちゃん?」
「ん?」
「なにすんの?」
「……え、ダメ?」
「や、だからなに?」
「……だああああー!!」
いつも冷めてるような岩ちゃんは仕事中、こんな風に感情を出すことはそうない。
だから貴重な姿であって。
なんだろ、可愛いく見えてきた。
「仕方ないなぁ、いいよ」
そう言うと首がもげそうなくらい私を振り返る岩ちゃん。
その目はランランとしていて。
なんとなく想像はつくけど、そんな嬉しそうな顔しちゃうの?
「マジでいいの?」
「うん、いいって!」
「え、なにするか分かってる?」
「んー。なんとなく?」
「……分かった、じゃあ、目閉じて」
「ふふ。はーい」
逆にオドオドしている岩ちゃんは本気で可愛くて。
私はそっと目を閉じた。
隣でゴホッと咳払いをして、フゥッて息を吐き出した岩ちゃんは、「失礼しまっす!」そう言うと、私の肩に手を添えた。
吐息なのか鼻息なのか岩ちゃんの甘い息が肌にかかった後、チュッて唇がほんの数秒触れた。
「眞木さんじゃなくて俺を選んで欲しい…ダメ?」
「ふふふ。そんなに私のこと好き?」
「……好きだよすげぇ。だから俺を選べよ」
二度目のキスは、触れるだけじゃなくて。
唇を数回甘噛みしてキュッと抱きしめられる。
「ふは、強引!女にはもっと優しくしなきゃダメよ?」
「優しいだろ、十分!」
「だからみーんな岩ちゃんから離れちゃうのかねぇ?」
「…ユヅキちゃんだけは俺の性格知っても変わらず接してくれた。この人と一緒にいたいって、自然と思うようになって…だから俺の傍にいてよ。だせぇ俺でも笑って傍にいてよ…」
「なんかプロポーズみたいね!」
私が言うと左手を掴んで薬指をパクっと咥えた。
「それはまた今度。あのさユヅキちゃん…」
「ん?」
「アバンチュールは俺とにして?」
「…聞いてたのっ!?」
「偶然だけど、」
「もう、仕方ないな!もっと優しくしてくれる?」
「めちゃくちゃ優しくする!」
「じゃあ傍にいてあげる」
手を伸ばすと岩ちゃんがふわりと私を抱きしめた。
一夏と言わず、永遠のアバンチュール見つけました!!
*END*