SHORT U | ナノ

 アバンチュールは君と!3

「じゃあ俺ゆきみちゃん送るよ」




眞木さんの奢りでお店の外に出ると、ムンとした生暖かい風がジメッと肌にまとわりついた。

その場が楽しいとお酒も進んでちょっとだけフラつく。

黒沢さんの言葉に苦笑いしたゆきみはキョロキョロと辺りを見回して。



「有難いですが、大丈夫そうです。すみません!」



そう言うと、大通りに隣接して止めてあった車から不機嫌な顔した直人くんが出てきた。

スーツ姿のままだからいったん帰って車で迎えに来たのかな?

あは、ヤキモチ妬かないって聞いてたけど、めちゃくちゃ妬いてるじゃん!




「お世話かけました!」




眞木さんと黒沢さんに丁寧に頭を下げると、ゆきみの腕を掴んでちょっと強引に車に連れ込む。




「すいません、お先です!ユヅキごめんねっ、眞木さん送り狼どうぞっ!」

「ちょっ!」



なんて事を!!

よく言ってくれた、ゆきみ!

もう一度内心ガッツポーズをしたら、黒沢さんが「じゃあ自分駅こっちなんで。お疲れっした」眞木さんに頭を下げて、私にニコリと微笑んで頭をポンッと叩くとそのまま駅の反対側に消えて行った。

ビバ2人っきり。

眞木さんはスッと私に手を差し出す。

迷うことなくその手を掴もうとした瞬間だった……




「眞木さん、すいません。こいつ本気にしちゃうんで、勘弁してください!」




……なんで!?

直人くんの直の後輩の岩ちゃんが私の腕を掴んでいる。

しかもなに、その言い方!

彼氏気取り?ちょっと何すんのよ!?

言い返そうとキッと岩ちゃんを見たら、何でか切なそうな顔で、途端に何も言えなくなった。

え、なに?どーいうこと?

そう思ってるのは眞木さんも一緒で。




「あーごめん、そっか、そーいうことだったのね、ごめん俺勝手に勘違いしちゃってたのかも…。岩田、ユヅキちゃんのことよろしくな!」

「はい。どうもすいませんでした。行くぞ!」




言いたい事が沢山あるはずなのに私の前を歩く岩ちゃんは振り返りも止まりもしない。

まさか家まで歩いて帰る気?

そう思ったら近くの駐車場に車を止めていたみたいで岩ちゃんのレガシーに連れ込まれた。




「あの、」

「直人さんに聞いて。つーか直人さんと飯食ってたらゆきみちゃんから4人でご飯行く!ってLINEきて…それで気になって迎えに来た。文句ある?」

「うん、ある!」

「あんのかよぉっ」



グダッとハンドルを抱えるように倒れ込む岩ちゃんはちょっとだけ可愛い。
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