▼ アバンチュールは君と!2
「カンパーイ!」
がシャンとグラスがぶつかりあう音と、グビグビってビールをイッキに喉の奥に流し込む。
プハーって口元のヒゲについた泡を手で拭う眞木さんはちょっと子供みたいで可愛い。
つい見とれていた私にニッコリ微笑んだ。
「1杯目はとりあえずイッキなの、ごめんね!」
隣の黒沢さんも同じようにイッキした後だった。
プライベートというか、大人数の歓送迎会や暑気払い、忘年会とかそーいう飲み会で顔を合わせることはよくあったものの、こうして少人数で飲むなんて初めてで。
だからこうして話し込むこともぶっちゃけ初めてのことで。
「ユヅキちゃん普段何してんの?休みの日」
「休みの日…眞木さん、デートしてください、本当しょーもないことしかしてないです。DVD見てお酒飲んで…」
「マジで?じゃあ俺誘っちゃおうかなぁ…」
冗談?本気?
ニコニコしている眞木さんの表情からはそれが読めなくて。
都合よく本気にとって冗談だったらそれこそ痛いから、ここは冗談にうけとっておこ……
――――うそぉ。
ゆきみの提案で隣同士に座った私と眞木さん。
恋が進展するには隣に座るのが一番いい!ってそう言って。
確かに目の前だとバクバク食べれないご飯も、隣なら目の前にいるのはゆきみだから食べやすいって思っていた。
それに距離が近いし何となく眞木さんとの間にあった距離も縮まって感じていたなんて。
キュッとテーブルの下で握られた手。
思わず眞木さんを見ると眞木さんも私を見つめ返した。
「今週末空いてる?」
それからボソッと聞かれて。
目の前ではゆきみと黒沢さんが楽しそうに話していて、私達の会話に耳を傾けている様子はない。
これは冗談じゃない、本気だ。
眞木さんの瞳の奥が熱く揺れているように見えるのは自惚れじゃない。
内心思いっきしガッツポーズをした私は、繋がってる指をキュッと握り返した。
「是非お願いします!」
「決まり!」
そう言うと、ポンッと背中を撫でられた。
手はそれで離れてしまったけど、眞木さんに触れられた温もりは消えない。
一夏のアバンチュールを思い浮かべて自然と頬が緩む。
ヤバイ!新しい服買いに行かなきゃ!!
気持ちはアバンチュールに向かっていて、ふわふわした気持ちでお酒の席を終えた。