▼ 不器用な恋6
「とりあえず岩ちゃんにLINE…」
「臣っ!あそこっ!」
臣ちゃんがLINEを開いたのと同時、美月ちゃんが臣ちゃんの腕を引っ張って、視線の先には岩ちゃんと駅の階段を降りてくるユヅキ。
その手はきっちり繋がっていて…
それを目にした俺の心はやっぱりちょっとだけ痛い。
ほんまにこれが恋、なんやろか…。
俺、ユヅキんこと、好きんなってしもたんやろか…
近づいてくる2人は全くと言っていほどこちらには気づいてへんわけで。
行き交う人の群ん中、ユヅキの横を若者がドカってぶつかって行った。
バランスを崩したユヅキが「キャッ!」って小さな声を上げて、慌てて走って行った俺の前、後ろから岩ちゃんがユヅキの腕を引いて抱きとめた。
「大丈夫!?」
「うん…ごめん、ありがとう…」
「いいよ。ユヅキのこと抱きしめられたから」
「…もう。恥ずかしい…離して…」
「やーだ。せっかく抱きしめられたんだから離さない!」
「岩ちゃん…」
「ユヅキ…」
何を見てるん、俺は…
お前ら、何しとんねんっ!?
「あほちゃうっ!!」
気づいたら叫んどった。
ズカズカ階段を上がって抱きしめられているユヅキの腕を掴んで引き離す。
「健ちゃん!なにっ!?」
「言うたやろ、似合ってへん!って。無理してるお前なんて何の魅力もないねんっ!そのままでえええっ!そのままのユヅキが一番奇麗やっ!!」
…大声やったかもしれへん。
けど俺は必至で。
必死というか、どうにもコントロールもできひんで。
ただこれ以上ユヅキを岩ちゃんに触らせたくないって思ったんや。
だから分かった―――これが、嫉妬なんやって。
俺、やっぱ好きやったわ、ユヅキんこと。