▼ 不器用な恋3
三人で飲んだ帰り際「俺送っていきます」紳士的に言った岩ちゃんが俺には狼にしか見えへんで。
赤ずきんを被ったユヅキがその尻尾に気づいていながら気づいてへんようにしているんやろうな…なんていらんことを思った。
元々酒の弱い俺はフラフラしながらも二人を置いてさっさと一人で帰ったんや。
あの二人、どうなったやろか?
土日が終わっても特に二人から何の連絡もこおへんかった。
うまいこといったんか、それとも特に進んでへんのか、気になりつつも月曜日出勤した俺の前、妙に色気づいた格好をしているユヅキが目に入った。
スカート?
巻き髪?
ネイル?
どないなっとんねん!
「おう」
「あ、健ちゃんおはよう!」
俺を見るなり目をランランと輝かせて近づいてくるユヅキ。
ふわりとユヅキと一緒に甘ったるい香りが鼻をついた。
「お前…――似合ってへんぞ」
ついうっかり言うてしまったんや。
なんやいつもと違う姿のユヅキに。
これが岩ちゃんの好み?なんか、俺にはユヅキが自然体に見えんくて。
「え?」
「無理があるやろ」
そんな風に思ってへんのに。
ユヅキらしさはかけてるけど、可愛いにこしたことはないって思ってるのに…
「なに?なんで健ちゃんにそんなこと言われないといけないの?」
目の前で泣きそうな顔をするユヅキに、胸が痛くなる。
「なんでもや。そんなことよりお前、どうなったん?」
俺の質問にユヅキがジロっと俺を睨みながら告げたんや。
「うまくいってる!健ちゃんのお陰で!でももう大丈夫だから、色々ありがとう!」
突き放された感じやった。
もうええわって。
俺はもうお前にとって必要ない奴なんやなって。
なんや妙に気分が落ちるやん…