▼ 不器用な恋2
「こんばんっは…」
迎えた金曜日の夜。
めちゃくちゃ緊張しているやろうユヅキと、なんなく誘いにのった岩ちゃん。
特定の彼女はおらんって言うて。
絶賛募集中を掲げとる岩ちゃんは、毎週女子達からの誘いが絶えない。
そんな中、先輩の俺の誘いを優先させたんはまぁ、できる子やなって思うわけで。
「こんばんは、岩田です。お招きありがとうございます」
丁寧に挨拶してニッコリ微笑むと目の前でユヅキが息を飲んだんが分かった。
「あー岩ちゃんユヅキの隣のがえんちゃう?」
「え?そうなんすか?」
「そらそーや。その方が絶対ええで」
俺の言葉に「じゃあそっち行きます」何も言えないド緊張のユヅキの隣にスッと座った。
「…あ、私横向けないかも…」
「え?何でですか?向いてくださいよ?ね?」
「…岩田くん、あのね、ちょっと近くて私、本当に今なら心臓吐きだせるかも…」
「いいっすよ、俺が受け止めるんで」
ポンポンって岩ちゃんが緊張を解くようにユヅキの背中を軽く叩いた。
そんなんしたら余計に吐くんちゃう?って思ったけど、ユヅキは至近距離で岩ちゃんをチラって見て…
「あの、迷惑だったら言ってね?私今なら引き返せると思うし…岩田くんだって選ぶ権利はあるし。ただ私の気持ちは変わらないから。初対面で気持ち悪いって思ったら遠慮なく拒否ってくれていいから。こうして隣で一緒にご飯食べれるだけで私、すごく夢見たいって思うから…」
真っ直ぐな気持ちやなって。
ユヅキなりに必死なのが伝わった。
確かに初対面で「気になってます」は、ある意味気持ち悪いもんがある。
ユヅキを知ってる俺やからかもしれんけど、直球で進んだユヅキを素直に可愛いと思った。
自分が言われたら嬉しいやんって。
「思わないっすよ、そんなこと。俺のがユヅキさんに嫌われるぐらい大雑把だし、第一印象で普通に可愛いし…次は俺が誘いますね?」
「…嬉しい…」
なんや俺、邪魔やんな。
どうかな?って一応俺もおった方がええかな?って思ったけど、なんやそれなら…
「んじゃそういうことなら後は二人で飲めや?俺も暇ちゃうねん!溜めとった〆切ギリやねん?」
「え?でも健ちゃんも一緒に…」
「そうっすよ、さすがにまだ会って数秒っすよ?いてください、健二郎さん!」
二人にそう言われて俺は立ち上がろうとした足を止めた。
まぁ、お前らがええならええけど。
何となく、楽しそうに喋る二人をモヤモヤした気持ちで見ている自分がそこにおるなんて…。