▼ シュガーラブ4
そんなこんなで、原宿についた俺達。
平日の夕方ともあってそんなに混雑はしていないけど、やっぱり人は多かった。
手繋いであげるって言ったユヅキは、今になってもまだ手を繋いでくれなくて。
なんなら俺と敬浩くんの前をえみちゃんと腕を組んで歩いている。
…えみちゃん変わってくんねぇかな…
なんて思いつつ。
「あった、新種のプリ!げ。何気に混んでるし!」
わお。女の園と言っても過言ではないここ、原宿のプリクラワールド。
見ても見ても回りは女子ばっか。
だから俺と敬浩くんはめっちゃ浮いていて…。
でも一部の女子は敬浩くんのかっこよさからか、ジッとこっちを見てる子もいて…
「敬浩くん…居心地すげぇ悪くない?俺ら…」
「そう?女ばっかで選び放題じゃん直人くんは!」
「ちょ!」
思わずユヅキを見るとシラっとした顔で呆れたように俺を見てるじゃねぇか!
俺は敬浩くんの腕を引っ張ってユヅキ達から離れると「なんてこと言うんだよ、おい」ジロっと長身の敬浩くんを睨みつけた。
だけど飄々としている敬浩くんはニヤっと微笑んで「ユヅキに誤解されたくないって?」そう続いたんだ。
「…バレバレ?」
「うん、めちゃくちゃ!」
「なら話は早い、協力してよ?」
「まぁ、おのずとな」
そう言うと敬浩くんはえみちゃんの隣に立って会話を始めた。
だから俺もすぐにユヅキの隣に行くとスッとユヅキがこのタイミングで手を繋いできたんだ。
「あ…」
「約束だから…」
「約束じゃなかったらダメな感じ?」
確信に迫りつつもユヅキの気持ちを何とか読みたくて。
「さぁね〜」
ガックシ。
「教えてよ〜!ユヅキ〜。そもそもユヅキに卑猥なお願い要求してきたのって誰?」
思い描く脳内には、クラスの男子全員が敵にすら思えてきて。
「篤志くん?良ちゃん?やっぱ啓司くんだろ?それとも…―――てっちゃん?」
ピクっとユヅキの頬が動く。
ポンポン名前を言っていたものの、俺が思うに哲也じゃねぇの?って。
顔のいい哲也は勿論顔だけがいいわけじゃなく性格もいいし面白いしでも、女子には特段優しい。
だからクラスの中でもこの敬浩くんと並んでツートップの人気を誇っている。
そんな哲也相手にユヅキも頬を緩ませることが多く…
「てっちゃんはそんな卑猥なこと言わないもん!」
そうやって、ちょっとだけユヅキの中でも特別な存在に見えなくもない。
ユヅキの中で何かにつけて守られているような哲也が正直羨ましい。
だからちょっとヤキモチというか拗ねた顔で「卑猥で悪かったなぁ…」なんて言ったらユヅキが更に俺を呆れた目で見てきた。
分かってるよ、分かってる。
ガキかって自分でも思うよ。
けどどうしようもねぇの、この感情。
ユヅキを前にすると甘えたいし、独占したい。
他の男の名前なんて口にされたくねぇし、俺をもっと見てほしい…
「……え、ユヅキ?」
「直ちゃんって草食なの?」
「はいぃっ?」
「ユヅキと付き合いたいんだよね?」
まさかのこんな公共の場でそんな台詞。
カアーって全身の血が顔に集中してくるみたいに赤くなっていくのが分かった。
「ブッ、ユヅキに言わせちゃダメじゃん直人くん!」
敬浩くんとえみちゃんまでもが俺を変な目で見ていて…
「思ってるよ、心から思ってるよ!!ユヅキと付き合いたいって!!」
気づくとそう叫んでいたんだ。