SHORT U | ナノ

 シュガーラブ2

「後ろ乗って?」



タイヤの横の引っ掛ける所に2人乗り用の金具を付けて俺がチャリに跨った。

勿論ながら声をかけたのはユヅキ。

隣のえみちゃんも敬浩くんに「乗れよ」って言われてて。



「お邪魔しまーす!」



そう言って元気よくユヅキが肩に手をついて乗っかってきた。

真後ろにユヅキの温もりを感じて内心ドキッとする。



「ごめんね、重くて。ユヅキ漕ごうか?」

「いや全然軽いって!さすがにそれ俺が恥ずかしい!しっかり捕まっててね?」

「うん。お願いしまーす」



ユヅキを後ろに乗せたまま走り出した。

田舎道に入るまでは一列で漕いでるため、今ここは俺とユヅキ二人だけの世界。

前を走る敬浩くんとえみちゃんは何やら楽しそうに二人で会話をしていて。



「ねぇ直ちゃん!」



不意にユヅキがほんの少し顔を俺の耳に寄せて名前を呼んだ。



「え?」

「たかぼーってえみ狙いなの?ねぇねぇ…」

「あー…それね、それ…」

「うん、それ!教えてよユヅキだけに内緒で。知ってるでしょ?」

「…まぁ知ってるけど…」

「やっぱえみ狙い?」



顔を寄せるユヅキに、脳内で俺のデビルが微笑んだんだ。



「教えてもいいけどさ…」



チラっと後ろを向いて至近距離にユヅキを感じる。

息使いまでもが分かって本当はすげぇドキドキしちゃってるわけで。



「なぁに?」

「俺のお願い1個聞いてよ?」

「…お願い?直ちゃんの?それってユヅキにできること?」

「…ん〜ユヅキしかできないかな…」

「えっちなこと?」



まさかの質問に思わずブハっと吹き出した。



「キャッ!」



その拍子にバランスを崩しかけて慌てて立て直す。

だからか、ユヅキが首に腕を回して胸を背中に押し付けてギュっと俺にしがみついてきて…



「も〜直ちゃん前見て漕いでよね〜?」

「ごめんごめん、今のはごめん。でもユヅキが変なこと言うから…」

「えー図星じゃん?ユヅキに何するつもりなの?」

「…なにってその…」



何、して貰う?

黙りこくった俺の耳をムニュって引っ張るユヅキ。

いきなり触られてギャって思ったものの、色々変な想像ばっかしていたせいかどうにも心地よくて…



「耳舐めて!!!」



思わずそんな言葉をユヅキに放っていた。



「…ダメ?だよね…やっぱ」



無言のユヅキ。

黙っちゃったよ、おい。

まぁ当たり前に俺達付き合ってるわけでもねぇし。



「ウソウソ、冗談!」

「…直人」

「えっ!?」



急に名前を呼び捨てにされて。

いつも”直ちゃん”って可愛く呼んでくれるのも好きだけど、普段呼ばれない呼び捨てにドキっとする。



「はい…」



耳朶の指はそのまま穴の中に入ってコショコショってされる。

う…やばい…



「ちょ、ユヅキ…。平衡感覚なくなる…。今はダメッ…」

「直ちゃんはユヅキ以外の子にもそういうこと言うわけ?」



そう言いながらもユヅキは一度離した腕を首に巻きつけた。

後ろからギュっとユヅキに抱きつかれている幸せな俺。

後ろを振り返ろうとすると、すぐそこにユヅキの顔があって、思わず前を向いた。


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