SHORT U | ナノ

 オンリーワン8

笑いが絶えない私達の時間。

いつも輪の中心に敬浩がいて、私がいる。

岩ちゃんを好きだった私ごと受け止めて愛してくれる敬浩は、下ネタ好きの変態なのに今だ手を出してこない。

もう吹っ切れてるのになぁ、私。

でも友達期間が長かった分、今さらそんな雰囲気想像するとちょっと笑っちゃうけど。



「あ、自分飲み物とってきますね」



不意に立ち上がった隆二くん。

まだ戻ってこない、ゆきみとてっちゃん。

何となく空気が変わったように思えた。



「えみ……これ」



聞こえた敬浩の声に顔をそちらに向けると小さな箱を私に差し出していて。



「え?」

「誕生日おめでとう」



まさかの言葉にドキッと敬浩を見た。

今ここに誰もいないのも敬浩の演出?



「開けてもいい?」



私の言葉に「勿論!」箱を受け取ってそれを開けるとそこにあるのは可愛らしいネックレス。

ジワリと喉の奥からこみ上げる涙。



「すごい可愛い…」

「それ、欲しかったんだろ?」

「うん。なんで知ってるの?」

「えみのことなら何でも分かるんだよ…」



腕を引っ張られて敬浩の胸の中。

安心できる温もりに、やっと抱きしめられた。

オンリーワンの温もりにギュッと顔を埋める。



「敬浩…」

「なに?え?今夜は帰りたくない?ずっと一緒にいたい?」



何も言ってないのにそんな言葉。

思わず感動も薄れて笑ってしまう。

そんな甘い空気、作れないもんかと思ってたけど…



「仕方ねぇ。えみがそこまで言うなら俺が一生傍で守ってやる!その代わり……」



グイッと頬を包まれて上を向かされる。



「えみは、一生俺の隣で笑ってろ!それが交換条件だ!」

「……うん」




素直に頷いた私に、待ち望んでいた敬浩からのキス。

煙草臭いカラオケBOXの部屋の中で交わす初めてのキスは、すごくすごく幸せだった。

この温もりを一生離さないって、決めた。






「コンコンコンコン♪連れてきちゃった、臣と直人さん!」



隆二くんの声と同時にさっきのメンバーがこの部屋に入って来た。



「え、」



驚く私の隣に座ったイケメンに思わず目が見開く。



「こんばんは、登坂です。今日誕生日なんですよね?おめでとうございます!」



花束ブーケを渡されて「ありがとう!」…ニッコリ微笑まれて顔が赤くなる。



「隆二!すっごい余計なことしてんじゃねぇよ!!」



敬浩がイラついた声を出している横で、ゆきみが直人さんに猛アピールしてる姿を頭を抱えて見ているてっちゃんがちょっとだけ不憫だった。



「じゃあ歌います、えみさんに!」



何故か披露されたアカペラのバースデーソング。

だけどみんなうまくて、やっぱり感動した。

きっとこうやって大好きな仲間と楽しく過ごしていける。

隣に敬浩がいる限り。



「えみ、お誕生日おめでとう!だいすきっ!」



ゆきみの笑顔に私も微笑み返した。




*Happy Birthday to EMI*
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