▼ オンリーワン7
「お誕生日おめでとうっ!!」
まさかのカラオケの一室を貸し切ってのお誕生日会。
仕事が忙しかったせいもあるけど、このリーズナブル感が私達には合っているんだって。
先陣を切ったのは敬浩…じゃなくて――――
「ヤバイ、惚れる!!!隆二!!!」
叫んだゆきみをバコンって叩くてっちゃん。
呆れた顔でゆきみを睨んでいて。
あれ以来、ゆきみは隆二くんを気に入ったみたいで、しょっちゅう呼び出している。
私の誕生日祝いの今日も当たり前に呼ばれていて。
「俺よりうまいのいるよ?」
「え、誰?」
「臣っていうの。顔もかっこいいし、すげぇかっこいいんだけど…呼ぶ?」
「「呼ぶ!!」」
思わずゆきみと声がダダかぶりして爆笑。
相変わらず私の隣にいる敬浩と、ゆきみの隣にいるてっちゃんが「「はぁー!?」」こっちの声もかぶってまた笑った。
「いらねぇ、いらねぇ男なんて!」
シッシって敬浩が隆二くんに手を振っていて。
誕生日は岩ちゃんに祝って貰えるかな?って勝手に思っていた。
でもちゃんと見渡せば私って人間を受け入れて祝ってくれる仲間が沢山いることに気づいた。
気づいたのは敬浩のお陰。
あの日、無理やりにでも私の気持ちを断ち切ってくれなかったら今の私はいないと思う。
一番の温もりを知ったらもう、二番目の生温い温もりなんて必要なくなるって思えた。
それぐらい敬浩は私に優しかった。
今もずっと。
「冗談!でも見るぐらいしたいな〜。隆二くん写メないの?」
「え、ありますあります!」
スマホをこちらに向けたそこには、吃驚するくらいのイケメンが写っていて。
「これはヤバイでしょ!!ゆきみ、見て見て!」
「…うん」
…あれ?
フリーズしてる?
「ゆきみ?」
声をかけるけどジーッと画面を見ていて。
「ちょっと見せて、隆二…」
「え、はい…」
隆二くんの手中からスマホを奪ってマジマジと画面を見ている。
「どうかしたの?」
「…うん、この人なんていうの?」
ジッと画面を見つめていて。
覗きこんだ隆二くんが「あー直人さんね。俺達の先輩ですっげぇ仕事できるけど、背低いっすよ?」…。
「直人。……身長とか関係ないよね。彼女いんの?」
「いや、ずっとフリーじゃないっすか?」
「立候補します!!!」
「認めない!!」
てっちゃんに抱えられてカラオケボックスから連れ去られていくゆきみ。
あの二人、冗談なのか本気なのか分からないけど、ゆきみが幸せならそれでいいやって。