▼ オンリーワン6
「実感ない…」
「そりゃそうだよ。えみの気持ち無視して無理やり俺が終わらせたんだもん…」
ちょっと項垂れている敬浩が可愛い。
失恋したんだって思うものの、岩ちゃんを想う苦しさは自然と抜けていて。
「ありがとう…」
頭を下げたらフワリと敬浩の腕に包まれた。
柑橘系の香りが私をまとう。
後ろにいるゆきみとバッチリ目が合っている私はさすがに恥ずかしいと思うけど、何となく動けない。
敬浩の言葉を聞いていたかった。
「悪かったな、勝手なことして…」
「うん」
「言っとくけど、全部嘘じゃねぇから…」
「うん」
「今度からは俺を頼ってよ…」
「うん」
「…もう泣いていいぞ」
「…ん」
ゆきみがてっちゃんと今市くんの腕を引っ張ってこの場所からいなくなった。
敬浩と二人っきり。
「寂しけりゃ俺が傍にいる。…つうか、傍にいて欲しい…俺が寂しいから、えみがいねぇと。えみの笑顔と元気にいつもパワー貰ってた。もう同期のイケメンは卒業させてよ。胸張って俺の女だってみんなに言いたい…」
うんともすんとも言えなくて。
心地良い敬浩の声が私を安心させてくれた。
強烈なスピードで私の隙間を埋める敬浩に、ギュっと抱きつくと、強く強く抱きしめ返してくれる。
…――ああ私、この温もりが欲しかったんだって。
二番目じゃ貰えない安心感がそこにはあった。