SHORT U | ナノ

 オンリーワン4

アンドロイドのスマホはLINEの小窓で文字が全文読めるようになっていた。

既読しなくても小窓をスクロールしていけば内容が読めて。



「助けて、別れたくない…」



そう言い残して意識を手放した私のそのメッセージをゆきみは見たんだと謝ってきた。


LINEには、彼女がちょっと疑ってるようなことを含めて、だからしばらく逢えないけど落ち着いたら連絡するから待ってて欲しいって内容。



【俺はえみと別れる気ないから】



そんなメッセージをただただ嬉しく思ってしまう私はそうとう重症だと思う。

でも、誰かを好きになるというのはそういうことなんじゃないかって。

分かっていても止められない気持ち全てが、恋なんじゃないかって。







「今市です…」



取引先のJSB社で岩ちゃんの同期だっていう今市くんがちょっとだけビビりながら私達の前に顔を出した。

勿論ここには岩ちゃんはいない。

てっちゃんだけだって思っていたのか、思いのほか多人数の私達に若干後退りしている。



「え、哲也さん、あの…」

「こんばんは、土田がいつもお世話になってまーす!同期のゆきみです。今日はお忙しいのにすみません。どうしてもお話したいことがあって」



ゆきみが今市くんにニッコリ笑顔を飛ばすと、少しだけ表情が柔らかくなった。



「話し、ですか?」

「うん、とりあえず飯食いながら」



ビルの7階にあるもつ鍋のお店に誘導した。

何故か私の隣にピッタリと座っている敬浩。

でもそれがどうしてか安心できて…



「今市くんのさ、同期に岩田っているでしょ?」



座るなり口火を切ったのは敬浩。

ゆきみもてっちゃんも大人しく見守っている。



「いますけど…」

「彼女いるよね?」

「え、はい。それがなにか?」

「…あーやっぱダメだわ俺、哲也くんちょっと交替!」



ブッてゆきみが吹き出した。

髪をくしゃくしゃにして自己嫌悪な敬浩。

その優しさはありがたい。

さっきの言葉も嬉しかった。

運び込まれたビールを乾杯もしないで一気に飲み干す敬浩に、てっちゃんが苦笑いして私を見た。



「単刀直入に言うけど。岩田くん、他にも彼女いること知ってる?」



低いてっちゃんの凄むような声に、私までドキっとした。
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