▼ あたしの夢3
それからしばらくたったある日の放課後。
帰ろうと靴を履き替えて外に出たあたしの前、ちょうど目の前にクラスの女子がたむろっていた。
その横を早々通り過ぎていこうとしたのに。
「待ちなよ愛沢!」
ヒイッ!!
おそるおそる振り返るあたしを睨みつけている女子達。
早く帰りたいのに、なによもう。
「な、なに?」
「ずーっと言おうと思ってたんだけどさぁ、あんたがうちのクラスにいるとすっごい空気暗いんだよねぇ。いっつも意味不な文章かいてるし、見せろよそのノート!」
いきなり鞄を引っ張り取られてノートを出された。
「やだ、やめてっ!返してっ!」
慌てて取り返そうとするけどそれを地面に落としてダンっと足で踏みつけられた。
グッと唇を噛み締める。
くだらないことすんな!
そう思うのに何も言えなくて。
それでもノートに手を伸ばしたらそれを靴でスコンっと蹴られて地面を滑っていくノート。
だけどそのノートをスッと誰かが拾ってくれて。
顔を上げて吃驚した。
まだ定時制の時間じゃないのに、写真で見たケンチくん。
ケンチくんはあたしのノートをパラパラと捲ってそれから視線をこっちに向けた。
「誰あんた」
警戒しながら女子達が怪訝にケンチくんを見ている。
「俺さ、小説読むのすげぇ好きなの。だから文章書ける人ってすごい尊敬してるんだ。ハルカちゃんの夢、邪魔すんなよ」
「ケンチくん…」
はい!って、砂を払ったノートをあたしに差し出してくれた。
「は?何言ってんの?本気で小説家にでもなれると思ってるわけ?」
あざ笑いながら上から女子達に言われた。
夢を語るのは自由だ。
誰にも否定する権利なんてものはない。
「なれるよ、ハルカちゃんなら!」
「ばっかじゃないの!!」
「何がだよ?人の夢を馬鹿にする方がみっともないだろ。馬鹿なのはキミ達の方だと思うけど!」
あたしが言えない言葉をキッパリハッキリ言ってくれたケンチくんに泣きそうになった。