SHORT U | ナノ

 始まりはキス2

それでもギュッと抱きしめてくれる健ちゃん先輩。

あたし初めて男に抱きしめられた。

どーしよう、恥ずかしい。

今更ながら極度の羞恥心。



「健ちゃん先輩、あたし熱っぽいです」



だからぶっ倒れたフリしてグタっと健ちゃん先輩に寄りかかった。



「うわ、ほんま?帰ろ、送る。もー熱あるんやったら無理やり連れてこーへんかったよー。言うて言うて、ちゃんと言わなあかんやん!」

「ごめんなさい。健ちゃん先輩楽しみにしてたように見えたから…」

「え、俺の為?」



明るめな高音に顔をあげると、ほんのり頬を赤くしている健ちゃん先輩。

綺麗な顔に思わず見とれる。

近くで見ると吸い込まれそうな大きな猫目。

健ちゃん先輩だって十分に素敵だ。



「あたしも健ちゃん先輩の歌聴きたかったです」



何でか困ったように眉毛を下げた健ちゃん先輩。



「りゅーじ!俺が覚醒せえへんように見張っとってぇ!ユヅキちゃん可愛すぎやわー」

「ぶはははは!!俺止められるかなぁ!あ、臣戻ってきた!臣見てみて、健ちゃん達!あ、ユヅキちゃん熱あるみたいで、健ちゃん送ってくって!」



隆二先輩の言葉にニッコリ微笑む臣先輩。

ご機嫌そうな臣先輩は、引っ付いてるあたし達を見て今度はニヤリと微笑んだんだ。



「さっき、見てた?」



それはあたしだけに聞こえる程度だった。

でもハッキリと聞こえた臣先輩の声に、その緩い笑顔に胸が締め付けられる。

分かってたの?気づいてたの?分かっててキス見せてたの?

臣先輩が何考えてんのか分からない。



「ユヅキちゃん荷物持って帰ろや?」



無視を決め込むあたしに、ポンポンって健ちゃん先輩が頭を撫でてくれて。



「はい、ごめんなさい」

「あほ、謝るんちゃうで?気づいてやれんくてごめんな?」



健ちゃん先輩の優しさに泣きそうになった。


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