▼ 始まりはキス2
それでもギュッと抱きしめてくれる健ちゃん先輩。
あたし初めて男に抱きしめられた。
どーしよう、恥ずかしい。
今更ながら極度の羞恥心。
「健ちゃん先輩、あたし熱っぽいです」
だからぶっ倒れたフリしてグタっと健ちゃん先輩に寄りかかった。
「うわ、ほんま?帰ろ、送る。もー熱あるんやったら無理やり連れてこーへんかったよー。言うて言うて、ちゃんと言わなあかんやん!」
「ごめんなさい。健ちゃん先輩楽しみにしてたように見えたから…」
「え、俺の為?」
明るめな高音に顔をあげると、ほんのり頬を赤くしている健ちゃん先輩。
綺麗な顔に思わず見とれる。
近くで見ると吸い込まれそうな大きな猫目。
健ちゃん先輩だって十分に素敵だ。
「あたしも健ちゃん先輩の歌聴きたかったです」
何でか困ったように眉毛を下げた健ちゃん先輩。
「りゅーじ!俺が覚醒せえへんように見張っとってぇ!ユヅキちゃん可愛すぎやわー」
「ぶはははは!!俺止められるかなぁ!あ、臣戻ってきた!臣見てみて、健ちゃん達!あ、ユヅキちゃん熱あるみたいで、健ちゃん送ってくって!」
隆二先輩の言葉にニッコリ微笑む臣先輩。
ご機嫌そうな臣先輩は、引っ付いてるあたし達を見て今度はニヤリと微笑んだんだ。
「さっき、見てた?」
それはあたしだけに聞こえる程度だった。
でもハッキリと聞こえた臣先輩の声に、その緩い笑顔に胸が締め付けられる。
分かってたの?気づいてたの?分かっててキス見せてたの?
臣先輩が何考えてんのか分からない。
「ユヅキちゃん荷物持って帰ろや?」
無視を決め込むあたしに、ポンポンって健ちゃん先輩が頭を撫でてくれて。
「はい、ごめんなさい」
「あほ、謝るんちゃうで?気づいてやれんくてごめんな?」
健ちゃん先輩の優しさに泣きそうになった。