SHORT U | ナノ

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そんなことがあったせいか、今回のEXILEツアーの申し込みは半端なくて。

用意されている関係者席じゃなくて一ファンとして毎回チケットを取っていた私は今回のチケットの取れなさ具合にすら落ち込んでしまっていた。

パフォーマーを引退した後、ダンスアースの活動をメインにすると言っていたよっくん。

ただでさえ海外に行くのに心配だなーって思っていたから気持ちはやっぱり複雑で。

せっかくのメディア進出の際も、自分の仕事が忙しいのを理由に見れない日が続いていた。

こんなにも落ち込む自分を、自分じゃどうすることもできなくて、不のスパイラルから抜け出せなくて。


「あ〜〜〜〜〜」


ぐったりデスクに寝転がっている私を余所に忙しそうなゆきみちゃん。


「何の企画してるの、いま?」

「今ツアーのガチャを…」

「へぇーどんな?」

「クリーナーは勿論なんですけど、缶バッチとあと、キーホルダーがいいかなって」

「キーホルダーいいねぇ!」


サンプルのキーホルダーを手にして目の前でチラつかせたら他の部署の子達がそれを見に続々と入って来た。

ここで私がよっくんとお付き合いしているのを知っているのはゆきみちゃんだけ。

いつも一緒にLIVEに行く子達は私がEXILE USAの一ファンだと信じて疑わない。

だけどどこか信用できなくて。


「あ、可愛いじゃん!首振りだー!これ欲しいっ!」

「ダメでーす!サンプルは全部回収しちゃうので皆さん是非ガチャにチャレンジしてください!」


イシシってゆきみちゃんがサンプルを持ってまたフロアを出て行く。

残された私を見て同期は近寄ってきて。


「ユヅキはUSAファンだって言っちゃダメだよ!」


…――――は?


「ガチャのカモになるだけなんだから!」

「え…」

「あ、もうお昼だ!今日あの新しいCafe行こうよー!」


数人連れ立ってうちのフロアから出て行く。

頭の中はまたも真っ白で。

なに?私USAのファンって言っちゃいけないの?

なにそれ。

え、どーいうこと!?

デスクに手を着いて倒れるみたいに椅子にストンっと座った。

どうして何も知らない人にそんなこと言われないといけないの。

よっくんが敬浩や哲也みたいな美男じゃないことは分かってる。

でも私にとってはいつだって一番で。

私の心を奪うのはいつだってよっくんだけ。

こんな環境じゃなければ普通の恋人ができたの?

でもきっと、この環境だから私達は出会って恋をしたんだって。

そんな言えない気持ちを抱えている私に、そんなこと言わなくてもいいのに。

カモって、なによ。

悔しくて涙が出る。


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