SHORT U | ナノ

 愛を教えます2

クレジットで支払いを済ませてユヅキさんを抱き抱えなおす。

足はほとんどたたなくて俺の腕一本で支えているけど。

家まで持たなそうだなー。


「すいません、部屋空いてます?」


バーのマスターに声をかける。

ユヅキさんは目を閉じていて、眠っているのか意識が薄れているのか。

無言で俺にもたれかかっている。


「はい。ございます…お泊まりになられますか?」

「お願いします」

「かしこまりました」


マスターからホテルの鍵を受け取って、エレベーターで上の階まで移動する。

ポーンっと音をたてて止まったエレベーター。

ユヅキさんを連れて廊下に出た。

部屋まで抱えて歩いて中に入る。

奥にあるベッドルームまで抱き上げて運ぶと、ふぅーっと小さく息を吐き出した。

寝っ転がるユヅキさんのヒールを脱がせてコートも脱がせた。


「んー隆二くぅん…」

「ユヅキさん。気分悪い?大丈夫?」


髪を撫でながらそう聞くと薄ら目を開けた。

クルリと眼球を回して部屋を見渡すと「…あ、ごめんね…気分は悪くないけど、足動かなくて…」この部屋の雰囲気に意識がハッキリしたみたいだ。


「どうして俺を誘ったの?」

「え?」

「分かってて誘ったの?俺の気持ち…」

「………」


コクっと頷いた。

やっぱりかー。

結局アキラさんには勝てないんだって。

それでもユヅキさんを好きな気持ちに嘘はない。

恋人がいるから諦める恋なら最初からしてない。


「教えてください…どうしてアキラさんと別れたんですか?」


ユヅキさんの傷は全部俺が受け止める。

1ヶ月たった今も酒飲んで荒れちゃうぐらい気持ちが消えないなら、まだ全然吹っ切れてなくて、きっと今でもアキラさんを想っているに違いない。

俺の言葉に真面目な顔したユヅキさん。

ベッド脇に腰を下ろしている俺を見てユヅキさんが涙目になった。


「諦めちゃったから…」

「え?」

「後は自分で考えて……」


誰にでも言いたくないことや、触れられたくないものはある。

ユヅキさんにとってそれが今の俺の質問なのかもしれない。

でも少なからず俺にチャンスを与えてくれたんだって、思ってもいいよね?

頬を撫でる俺の手にユヅキさんの冷たい手が重なった。


「…ユヅキさんの心の苦しみ全部、俺にちょうだい?俺がずっと傍にいてユヅキさんを守るよ…」


ポロっと真っ赤な目から涙を零すユヅキさんに顔を寄せて、酒混じりの吐息を飲み込むようにキスをした―――――


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