▼ 愛を教えます2
クレジットで支払いを済ませてユヅキさんを抱き抱えなおす。
足はほとんどたたなくて俺の腕一本で支えているけど。
家まで持たなそうだなー。
「すいません、部屋空いてます?」
バーのマスターに声をかける。
ユヅキさんは目を閉じていて、眠っているのか意識が薄れているのか。
無言で俺にもたれかかっている。
「はい。ございます…お泊まりになられますか?」
「お願いします」
「かしこまりました」
マスターからホテルの鍵を受け取って、エレベーターで上の階まで移動する。
ポーンっと音をたてて止まったエレベーター。
ユヅキさんを連れて廊下に出た。
部屋まで抱えて歩いて中に入る。
奥にあるベッドルームまで抱き上げて運ぶと、ふぅーっと小さく息を吐き出した。
寝っ転がるユヅキさんのヒールを脱がせてコートも脱がせた。
「んー隆二くぅん…」
「ユヅキさん。気分悪い?大丈夫?」
髪を撫でながらそう聞くと薄ら目を開けた。
クルリと眼球を回して部屋を見渡すと「…あ、ごめんね…気分は悪くないけど、足動かなくて…」この部屋の雰囲気に意識がハッキリしたみたいだ。
「どうして俺を誘ったの?」
「え?」
「分かってて誘ったの?俺の気持ち…」
「………」
コクっと頷いた。
やっぱりかー。
結局アキラさんには勝てないんだって。
それでもユヅキさんを好きな気持ちに嘘はない。
恋人がいるから諦める恋なら最初からしてない。
「教えてください…どうしてアキラさんと別れたんですか?」
ユヅキさんの傷は全部俺が受け止める。
1ヶ月たった今も酒飲んで荒れちゃうぐらい気持ちが消えないなら、まだ全然吹っ切れてなくて、きっと今でもアキラさんを想っているに違いない。
俺の言葉に真面目な顔したユヅキさん。
ベッド脇に腰を下ろしている俺を見てユヅキさんが涙目になった。
「諦めちゃったから…」
「え?」
「後は自分で考えて……」
誰にでも言いたくないことや、触れられたくないものはある。
ユヅキさんにとってそれが今の俺の質問なのかもしれない。
でも少なからず俺にチャンスを与えてくれたんだって、思ってもいいよね?
頬を撫でる俺の手にユヅキさんの冷たい手が重なった。
「…ユヅキさんの心の苦しみ全部、俺にちょうだい?俺がずっと傍にいてユヅキさんを守るよ…」
ポロっと真っ赤な目から涙を零すユヅキさんに顔を寄せて、酒混じりの吐息を飲み込むようにキスをした―――――